綴織

□ZER0-empty doll-
1ページ/14ページ

〜はじまりのゆめ〜

母なる海と同じ青い瞳が閉じられる。眠るように、祈るように…いまでも彼は、創り続ける―――


ふわ。ふわり。
蛍火があたりを照らしだす。それはそれは、幻想的な色彩で。

耳鳴りが、する。
段々と、何かはわからぬ哭き声が鮮明に聞こえだす。
それが何処から聞こえるのか、何を意味するのか、それすらわからない。

ふわ。ふわり。
光が、ふつりふつりと融けるように消えていく。残り蛍が自分のまわりをゆるゆると取り巻く…途端、世界は弾けるようにまばゆくなる。

『…んちゃ……ん…』
目の前には、銃口をむける軍人の姿。陽暁邦軍の正装、それから、臙脂の外套を羽織ったリーダー格の男。
…そして、その向こう側。
怯えた瞳に涙を浮かべた、赤メッシュのポニーテールがトレードマークの少女。
よく知っている、わたしの、親友。
彼女は必死に何かを訴えんと叫ぶが、聞き取ることは叶わない。喉元に短剣を突き付けられ、腕を締め上げられている彼女を助けることも、だ。

…躯が、動かない。

はっと気付けば、自分は龍の姿に成っており、梵字の様な文字で呪を描かれた鎖がまとわりついていた。
翳む視界の端で臙脂の外套の男が指示を出すと、少女は解放され床に投げ出される。
外套の男は、彼女に興味を失ったかのように自分の方へ、躰の向きを変える。

“やれ”

顔半分はフードに覆われていて見えぬが、口は確かにそう動いた。その口元が、にやりと歪むのを見上げた瞬間、紅い花弁が宙を舞った。

―――世界が暗転する瞬間、わたしが見たのは…すべてが壊れてゆく姿―――
それは現実、それは幻、そして…夢。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ