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□少し、昔話をしようか
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幸村に騙され、異世界に引きずりこまれた朝霞小雪です。(「いやだなぁ、願いを叶えてあげただけなのに」)(「………」)


まぁ、そんなに元の世界に未練はないんだけど。ただ、ちょっと納得がいかないとゆーか、なんとゆーか。

仕方ないので今は跡部の家に住まわせてもらってます。(「仕方ないとはなんだ」)(一々話に入ってこないでいいから」)


古城を改装して作られたここは、彼らの事務所でもある。


魂が迷わないように誘導したり、魔物同士の喧嘩を止めたり、事件を解決したり。

とにかく各自がいろんな仕事をしてて、その情報のやりとりをしたりするのが此処、跡部邸なんだとか。


私は住み込みで簡単な仕事を手伝わされている。騒がしいみんなと一緒に居るのは楽しい。でも。



「はぁ…」



疲れた。
色んな意味で。





「やぁ、小雪ちゃん」

「ああ、不二…」

「溜め息なんか吐いて、どうしたの?」




溜め息を吐いていた理由?そんなの、アイツ等に決まってる。

その点、不二は良い人だよね。
どっかの俺様みたいに寝ているときに部屋に忍び込んで血を飲もうとしないし(「僕は雪女だからね」)、もふもふ狼を愛でてても邪魔しないし(「慌てる忍足が面白いからね」)、幸村みたいにむやみに心読んだりしないし(「必要ないからね」)(…え?)。





「みんな、小雪ちゃんが好きなんだよ」

「私をからかうのが、でしょ?仮に好きでやってるとしても、私はふつーの恋を希望するよ」



呆れて溜息しかでない。
そんな私に苦笑していた不二が、小さく「恋、か…」と呟いた。




「え?あ、どうかした?」



笑顔を曇らせた不二。
何か言っちゃいけないことを言っただろうか。



「いや、ちょっと昔のことを思い出して…」

「昔?」

「……うん。僕が、恋した女性の話」




不二は愛おしそうに、また、どこか寂しそうにその人を思い浮かべた。





「聞いても、良い?」

「……そうだね…聞いてくれる?」




頷くと「長くなるから座ろうか」と暖炉の前のソファーをすすめてくれた。
少しの沈黙の後、彼はゆっくりと話し始めた。




「…昔、ある村に、皐月っていう女の子がいたんだけどね……」








少し、昔話をしようか

〜雪女、不二周助の恋〜
 






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