Hyotei

□中編
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「忍足、いい加減ウザイ」

「さっさと諦めるか謝るかしろ」

「…何でこーゆーときだけ仲ええんや」




小雪と話ができへん。
メールや電話に反応あらへんし、何より小雪の友達が邪魔をしてきよる。




『自己満足のためにあの子のこと振り回さないでくれる?』

『はぁ?自分には関係ないやろ』

『今のアンタは元カレ。私は大親友。小雪に関係ないのはどっちかしら?』

『俺はまだ別れるて言うてないで』

『ええそうね、小雪に言われたのよね』

『………』





グサグサと刺さる言葉ばかり言いよって…!
その友人も小雪とクラスはちゃうはずなのに、いつも小雪にベッタリで。
頑固として小雪に俺を近付けないつもりらしい。





「会ってどうすんだよ」

「そら、別れよて言うた理由を―…」

「お前の彼女が傷付く理由なんざ分かりきってんじゃねぇか」






…は?





「なんで跡部が知っとるん」

「俺からしてみれば、お前が気付かないことの方が驚きだがな」

「なんや、理由て」

「しらねぇよ」

「嘘吐くなやっ!」




言うとることめちゃくちゃやないか!

カッとなって、思わず跡部の胸倉を掴んで叫んだ。そんな俺に、嫌味ったらしく笑った。





「らしくねぇぜ?忍足」






――なに熱くなってんだよ

たかが、女一人に――





跡部の一言に、俺は固まった。

気が付けば、教室にいる全員がこっちを見とった。手の力が緩む。すかさず跡部は俺の手を払いのけた。そして、平然とした顔で乱れた制服を整えると、一言だけ言い残して去って行った。






「テメェ自身でよく考えるんだな」







跡部に言われるまで、気付かんかった。
せや、何で俺、こんなに熱くなっとるんや…

何で、こんなに小雪を求めとるん?


何で―…








俺は、アイツが好きやったはず、なのに。








アイツは俺のことなんてちっとも好きやなかったんやろうけど、俺は違った。跡部と付き合いだしたって聞いたときはホンマにショックやった。

どうしたらええんか分からなくなって、自暴自棄になりかけてたとき。小雪に、会ったんや。



真っ赤になって、玉砕覚悟て感じで想いを伝えてきた小雪。
俺も、こうすればアイツと付き合えたんやろか。そんなことを思いながらその告白を聞いていた。


狂いそうなくらいの苦しみを、紛らわせたくて。俺は、小雪と付き合うことにしたんや。



…最低やな、俺。




アイツの代わりみたいなモンやったんや。なのに、小雪と別れるなんて、小雪から言われるまで考えたことなかった。


小雪の隣は、いつも温かくて。
いつも、心が満たされていて。







『アイツは今、らしくない程彼女溺愛中だ』






いつだったか、跡部が言っとったらしい台詞。


アホか、俺。今更気付くなんて。






せや、俺は。




小雪が、好きなんや。ほんまに。
俺らしさなんて、どっかに言ってまうほど――…



後編に続く

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