Hyotei
□ここから、また 前編
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侑士を待つことなく、おとなしく教室に戻った。
擦れ違っていただけで、私のクラスに来てたりしないかな。そんな淡い期待を抱いていたけど、やっぱり居なかった。
「あらぁ?朝霞さん、忍足君とお昼食べないの?」
「振られちゃったんだー可愛いそー」
「弱ってるところに付け込むからよ。ねぇ?」
昼休みに一人で居るのは、辛い。
別れることを望んでいる人達が多いから、色々と言われる。
教室から出て友人のクラスに行けば良いんだけど、もしかしたら侑士が来てくれるかもしれない。そう思うと、此処から動けなくなる。
「アンタ達の好きな忍足って、そんな事言う子が好きなんだー。趣味悪ぅ」
「なっ……」
「ほら、散った散った。邪魔だから」
いきなり、背中に重みを感じた。
声で、抱きついてきた人物が分かった。シッシと彼女達を追い払ってくれたのは、思い浮かべていた友人、皐月だ。どうしてここに?と聞くと…叩かれた。
「痛いよ皐月さん…」
「アンタが虐められてるって教えてもらったからよ」
「虐められてるわけじゃ…まぁ、嫌みは言われたけど」
「それは虐めよ。いや、名誉毀損罪って立派な罪ね」
私以上に怒っている皐月。
それが何だか嬉しくて笑ったら、笑い事じゃないわよとまた叩かれた。
「で?やっと別れたって?」
「別れてないよ。侑士が教室に居なかったから、戻ってきただけ」
「はぁ?恋人放って何してんのあの伊達眼鏡は。てか小雪、忍足居ないなら私のクラスにくればいいじゃない。何で此処に…はぁ、あんた、ホントに馬鹿ね」
まだ、何も言ってないんですけど…。
理由を察した皐月は、怖い顔をしてる。だって、侑士がここに来たら悪いから…と言うと、何の為の携帯があるのとまた怒られた。
「あ、そっか。皐月を携帯で呼べば良かったんだ」
「だ〜か〜らぁ〜、忍足が小雪に会いたかったら忍足が携帯なりなんなり使って小雪を探すでしょ!小雪が忠犬ハチ公になることないの!」
ちゅ、忠犬ハチ公って…。
「侑士は死んでないよ?」
「そこじゃないわよっ!」
その後は皐月の教室に連行され、昼休みが終わるまでさんざん怒られた。
やっぱり、侑士からの連絡は来なかった。