Hyotei
□Be My Valentine
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「あの、何でそこで顔を赤くするかな君は」
「あほ…」
「え、今更ツッコミ?」
「一か月後と言わず、今恋人になったるよ」
「………へ?」
何の話だ、一体。
ちょっと待って、忍足。
なんか、だんだん、距離が縮まってないですか。
私は自分の席に座っていた。残念ながら私の席は窓際。
横から近づいてこられると、後退するには限度があるわけで。
ようは、逃げ場がない。
「あの、近いんだけど」
「朝霞…」
「わ、ちょ、なに!?」
色気ただ洩れな忍足の顔がゆっくりと近づいてくる。慌てて押し返すも、びくともしない。
肩膝をついた忍足の顔は私よりも低くなるわけで、自然と上目遣いになるわけで、ちょっとなんだこの空気は。冷静になろう、冷静に。心臓、ちょっと止まってくれ。いや、止まったら困るか。
「おおおお忍足、ど、どうしたの」
「朝霞」
「は、はい!」
「好きや」
この雰囲気で、好きって…
いや、あの、告白にしか聞こえないんですけど。
忍足の手が頬にそっと触れた。
ぎゃーって叫びそうになるのをなんとか堪えた。
「ホワイトデーにも、ちゃんとお返ししたるけど」
なんでこんな状況になったのかは分からないけれど、一つだけ分かったのは。
「今日から、俺が朝霞の恋人になってええやろか」
彼のその瞳が、真剣だったということ。
+Be My Valentine+
考える前に自然と体が動いた。
気付いたら、頷いていて。
気付いたら、私は忍足の腕の中にいた。