Hyotei

□Be My Valentine
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お菓子作りが好き。
なにより自分が作ったものを人に食べてもらうのが好き。

そんな私がイベントのたびにお菓子を作って学校に持っていくのは、最早習慣となっていた。


今日はバレンタイン。
今年も友達に配ったり、チョコを強請りにきた男子に渡したりしていた。そして、最後の一つを渡す為に、私は放課後一人で教室に残っていたところだ。





「朝霞…すまん、遅くなってもうた」

「ああ、忍足―…って、うわぁ、凄い数だね。はい、これも追加しといて」





その最後の一人が、ようやく教室に戻ってきた。ずいぶん戻ってくるまでに時間がかかっていたから予想はしてたけど、相変わらずモテるこの男には同情さえしてしまう。

以前は、こんなにプレゼントを貰うのにどうして私のをわざわざ貰いに来るんだろうと疑問に思っていた。
でも、跡部とプレゼントの数を競ってるって噂を聞いてからは、忍足も普通の男の子なんだなと納得するようになった。
こんなお菓子でも、1コは1コだしね。




「ちゃーんと俺の分とっといてくれたんやなぁ」

「だって、もう怒られるの嫌だし」



確か、二年のときの…クリスマスだったかな?

作ってきたお菓子が好評で、忍足が来たときには完売していた。
そのときの忍足は、なんとゆーか…面倒臭かった。

落ち込むわ、最後の一個を食べたクラスの男子を怒るわ…まぁ、翌日お菓子を持っていってあげたら機嫌は直ったんだけど。


そんな経緯があったから、あれ以来お菓子を作ったときには忍足のだけ袋に名前を書いて、ちゃんと渡すようにしている。



「お、今年はパウンドケーキなんか」

「うん。じゃあ、お返し期待してるからね」




忍足にプレゼントを渡すと、毎回お返しをくれる。
これがまた、さすがは忍足って感じで、女の子が喜ぶツボを心得ているんだ。
こうして待たされても、それがあるからまぁ許してやろうと思える。




「お返しなぁ…」

「え?今年は無しなの?」

「いや、ちゃんと渡すて。そうやのうて、何がええかなぁって。そや、朝霞。なんか欲しいモンないんか?」

「へ?」




私の意見を参考にするの?

忍足にプレゼントを渡す女の子って、忍足の事がだぁい好きって子ばかりだから、忍足がくれたものなら何でもいいと思うんだけど。





「キャンディーでも配れば?たくさん用意しなきゃなんだろうし」

「はぁ?飴ちゃんそんな好きなんか?」

「飴嫌いな人ってあんまり見ないけど」

「…いや、一般論とちゃうて。朝霞が欲しいモンを聞いとるんやけど」

「私?」




私が欲しいものって言われても…特に思いつかないんだけど。

あー…でも、この時期になると、妙に寂しくなんだよねぇ…。人肌恋しくなるとゆーか、なんとゆーか。バレンタインだからか、やたらとカップルが多く感じるし。




「強いて言うなら、恋人が欲しいよ」




友人に、彼氏に手作りチョコ渡したいから作り方教えて!と必死に頼まれた。あの子を見てると、大好きな人のために頑張れるっていいなぁーって思えてくる。

なんて、僻んでもしょうがないか。

忍足にこんなこと言ったら、「何言うとんねん」ってツッコミがくるだろうな。

漫才のノリで、バシッって叩かれるかもと身構える。でも、ツッコミはこなかった。
呆れて何も言えないのかな?と顔色を窺うと、何故かそこには顔を赤らめた忍足がいた。
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