Hyotei

□僕らのスピードで
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「あらら…」


あれから数日後。

また皐月から遅刻するとの連絡があり、例のお店に行ってみら満席。
そりゃ、この時間は混むか。


別の場所で時間をつぶそうか悩んでいると、ぽんっと肩を叩かれた。



「わっ」

「また会ったなぁ、お嬢ちゃん。席探しとるん?」



それは、この前相席したあの眼鏡のお兄さんで。
もう一度会えるなんて思ってもみなかったから驚いた。



「あ、はい。でも混んでるから別の店にしようかなぁ…って」

「よっしゃ、ならこの前のお礼や。あそこにおるから、この店にしぃや」



それだけ言うと、彼は自分の席へと戻ってしまった。

ぽかーんとしてしまったけど、相席どうぞってことだよね?
なら、お言葉に甘えようと私はレジに並んだ。





「なんだかすみません…」

「どーぞ。ちゅーか、俺一生懸命手ぇ振ってたんやで?こっちやーって」

「え?気付かなかった…」

「深刻そうな顔して悩んどったからなぁ」




たぶん、この辺で他の店ってなんだろうって考えてたんだ。
そんなとこから見られてたんだ…恥ずかし。



「よく気がつきましたね、私だって」

「恩人くらいすぐ見つけるわ」

「恩人って…」

「あんとき、めっちゃ疲れててん。座れんかったらどないしよかと思ったわ」



せやから、恩人。
にっこり笑う彼。
ううっ…ダメだ、直視できません。



「恩人のお嬢さん、お名前は?」

「ふふっ、なんだかその聞き方おかしい。朝霞小雪です」

「朝霞さんやね。俺は忍足侑士や。シノブにアシでオシタリ」



机に指で漢字を書いてくれた。
忍足って苗字初めて聞いたよ。




「知らなかったら、ニンソクって読んじゃいそう」

「オシタリやから、よろしゅうな」



そんな話をしていたら、いつの間にか結構時間が経っていたみたいで、皐月から電話がかかってきてしまった。




「あっ、ごめんなさい。友人が着いたみたいなんで、これで失礼します」

「そうなんや…すまんな、引きとめたみたいで」

「いえ、楽しかったです。ありがとうございました」




慌てて立ち上がる私に、忍足さんは意味深な笑みを浮かべた。



「ほな、またな」

「え?」

「二度あることは…って言うやろ?」

「…なるほど」




じゃあ、また。
そういって、彼と別れた。
彼とは、本当にまた会える気がした。









+僕らのスピードで+







この恋は、運命に任せ、ゆっくり進んでく。





***Title by BLUE TEARS



三度目は、偶然じゃなくて必然になると思います。
一応、店はすたばとかどとーるとかたりーずとかのイメージ。表現力が乏しい…。

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