Hyotei

□人生はおとぎ話
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「跡部、くん…」

「何してやがる」

「えっと、その…」




ああ、何で本人に見付かっちゃうかな。

何か、何か言わなきゃなのに。





「それは、俺へのプレゼントか?」

「………」




こくん、と。
頷くだけで精一杯。ああもう、情けない。






「なんで、直接渡しに来ない」




そうだよね、やっぱり直接渡すべき……え?




「はい?」

「貸せ」



いつの間にかすぐ傍に来ていた跡部君は、私の手からプレゼントを取り上げると、暫く眺めて。




「今回も、一言しか書いてねぇのか?」





信じられない言葉を口にした。


嘘だ、だって。


気付いているわけ、ないのに。





「聞いてんのか?…まぁいい、中身を見れば分かることだ」

「えっ、ま、待って…!」




跡部君は聞こえない振りをして、中に入っていた小さなメッセージカードを取り出してしまった。






「跡部君へ、いつもありがとう。

  朝霞より。
…なんだこれは。俺はお前の父親じゃねぇっての」

「ご、ごめんなさい」

「誕生日のときには、もっと良い言葉が書いてあっただろ?」







ほら、言ってみろよ。





なんで、どうして。
疑問がたくさん浮かぶけど。






「まぁまずは、誕生日プレゼントに名前を書かなかった罰だな」





跡部君の顔が、近付いてきたから。

もう、何も考えられない――…






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