□君には全てお見通しだった
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泉は自覚してないけど、かなりモテる。
放課後の呼び出しだってあるし、女子の作ったお菓子とかも貰ってる。
泉は断ってるけど、その女子って意外と強引だったんだよね。
ねぇ泉、わかってる?今話してる女子も、お前のこと好きだよ。

「なんでんなことわかんだよ」

女子と話し終わって泉はオレのとこにきた。
なんで、って。オレが泉を好きだからだよ。いつも見てるから。
あの女子も、オレと同じ様な視線を泉に送ってるんだ。
いらいらする。

「見てたらわかる」
「はぁ?なにそれ、お前はエスパーかよ」
「...笑わないで」
「は?」

そんな顔で笑わないで。泣けてくる。
見た感じ泉は女子と話すの苦手そう。というかめんどくさそう。
だけど、適当に相槌うっててもあの子らは泉と話せるだけで嬉しいんだよ?めんどくさいなら話さなきゃいいじゃん。

「泉ー、呼んでっぞ」
「おー」
「い、いずっ!」

思わず泉の腕を掴んでしまった。
だって、呼んでるって、女子でしょ?行かないで泉。
付き合ってるのはオレでしょ?泉はオレが好きなんでしょ?
泉から好きと言う言葉は、聞いたことない、けど...
だけど、付き合ってるんだから、オレのとこにいてよ。お願い、行かないで。

「浜田?」
「...」
「泉ー、呼んでんだから、早くこいよー」
「あ、おう」

行かないで。
そんな思いは泉には届かなくて、するりと抜けた腕。
泉はそのまま扉のとこに行ってしまった。
ねぇ泉、お前ほんとにオレのこと好き?
いつもオレばっか、泉に好き好き言って...泉はどうなの?わかんない。泉の考えてること、わかんない。
がたん、と席を立って後ろのドアから出て行った。
ちらりと見えた、前のドアで泉と話してる女子。
嬉しそうに頬染めて、幸せそう。
泉は無表情だけど。眉間にシワ寄せてめんどくさそう。
泉は冷たい言い方をする奴だけど、ほんとは優しいから適当に話合わせてるのかな。
そんな優しさが、辛い。
じゃあオレと付き合ってるのも、優しさ?
幼なじみみたいな存在だったから、断れなかった?
嫌な事ばかり考えてしまう。目頭が熱くなってじわりと涙が浮かんだ。
ダメだ、逃げよう。

「あ、待てよ浜田」
「、いず、み...」
「どうしたんだよ、泣いてんの?」
「な、泣いてないよ!」
「...ははーん、」
「な、なに?」

にやりと笑って泉はこっちこい、と言いながらオレの腕を掴んで屋上まで行った。屋上の扉が閉まった音がした。
泉はくるりとオレの方を向いて、言った。

「しゃがめ」
「、へ...?」
「いいから」

わけわかんないけど言われたままにしゃがむ。
泉も膝だけついてオレをじっ、と見た。
手が伸びて来て、思わず目を閉じると、頭にふわりとしたものが置かれ、そのままわしゃわしゃと撫でられた。
な、なにこれ。

「あの、泉...?」
「...」
「え、うわっ!?え、え!?」

頭に置かれていた手がなくなったと思うと、いきなり泉に抱き着かれた。
ドキドキとオレの心臓ははち切れそう。
な、なにこれ!?急にどうしたの泉!?

「不安がんなよ」
「、え...?」

ぎゅうっ、といっそう腕の力が強まった。
泉の匂いがする。落ち着く。

「オレが好きなのは、お前だけだからな」

...え。
ぶあああっと顔に熱が集まるのがわかった。
ど、どうしたの泉!?か、かっこいい...
てか泉に今、はじめて..

「は、はじめて泉に好きって言われた...」
「...そうだっけ?」
「う、嬉しい、泉ぃ...」
「泣くなよ、ばーか」

嬉しくて嬉しくて、涙がボロボロ出てくる。
好きすぎて、やばいよ泉。
抱きしめていた腕が解けて、泉はオレをまたじっ、と見た。

「浜田が好きだ」

だから、安心しろ。
そう言いながら、泉はオレにキスを落とした。

あぁ、やっぱりもう...
君には敵いません。



end.


→あとがき


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