□僕の愛に溺れてみませんか
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こいつはいつもオレの目の前に現れる。なんでオレに構うんだ。
小中幼なじみだから?中学の後輩だったから?
でも今は関係ねぇだろ。同じ学年、ってだけ。なのになんで絡んでくるんだ。

「...邪魔」
「いーじゃん」
「...はぁ」

何度言ってもムダかよ。こいつ...授業中に後ろ向くな。オレの机によっ掛かるな邪魔。
あぁ、早く。早くチャイム鳴れ!!!

「じゃあ今日はここまで」
「あ、泉!」

教師が言った瞬間席を立った。
トイレにでも行ったらどっか行くだろう。
...と、思ってたのに。

「っんで着いてくんだよ!」
「えー、だって...」
「あ?」
「好きなんだもん、泉のこと」

...は?

「泉、大好き」

びくりっ、体が跳ねる。
背中には壁。横には浜田の手があって、逃げれない。ドクン、と心臓が揺れた。
な、なにを言ってるんだこいつは...

「...はぁ!?」
「ずっと好きだった」

ずいずいとオレに近づいてくる。やめ、やめろ!なにしてんだ!!
でも体が動かない。両手も自由なのに、体が硬直して動かない。

「好き」

左に置かれていた手が一瞬離れて、オレの顎を掴んだかと思えば、ふに、となにかが唇に当たった。
キスだと、気づくのが遅かった。

「いってぇ...」

気づくと浜田の頬を叩いていた。はぁ、はぁ、と肩で息をするくらい、心臓が苦しい。
顔が赤くなる。じわじわと、徐々に赤くなっていく。
浜田は叩かれた頬を押さえながらオレを見ていた。
なんで、笑ってんの。

「泉、顔真っ赤」
「っ!!」

はは、と笑いながらオレの頬を触る。う、動かない。なんで?体、動けよ!

「緊張してんの?」
「なっ...」

動かない。やめろ。近づくな。
顔が、浜田の顔が、また近づいてくる。

「チャ、チャイム!」
「は?」
「チャイム鳴った!!!」

チャイム音でびくりとしたが、やっと体が動いて浜田に知らせた。
浜田はあー、鳴っちゃったか...と言ってオレから離れる。
その隙に走って教室に行く。浜田は泉!と叫んだが、知らない。知らないふりをして、走った。

「お、浜田どうしたその顔ー?」
「あー、好きなやつにキスしたら叩かれた」
「!!」

教室に入ってきた浜田にすかさず田島が聞いた。それを聞いたクラスのやつが浜田の方向を見て、だっせー、だの浜田積極的!だの言っていた。
つーか浜田...こっち見て言うな!!!

「席に座れ!」
「へーい」

教師の一言で静かになり、授業が始まった。
...視線が...くそ...浜田!こっち見んじゃねえ!!!!!
それから浜田から逃げるようにした。浜田は、ほんとにオレのことがす、...好き、なのか...?
浜田は女子にも人気あるし、中学の時なんか結構付き合ってたじゃん。あんま長く付き合ってたことはなかったけど。
それが、なんでオレ?ただの気まぐれ、なんじゃないか?だってお前は、どうせ女子に告白でもされたら...すぐに...

「あ、泉!」

目の前には女子と話してる浜田。オレに気づいて手を振ってきた。
...無視だ。無視してやる。

「...泉?」

無視して、そのまま浜田の横を通り抜けた。
そう、そのまま帰ればいい。部活に、そのまま行けばもう浜田から逃げれる。

「ちょ、泉!!」

ぐいっ、と腕を掴まれた。そのまま浜田の方を向かされる。
な、んで...なんでそんな顔するんだよ...泣きそうな...意味わかんねぇよ...

「ねぇ、ねぇ...どうしたの...?」
「...別に」
「、オレのこと見てよ...」

その瞬間、唇にまた、なにかが当たった。

「っ!!」

ドンッ!!と力いっぱい浜田を押した。浜田は後ろに倒れ、しりもちを着いた。
その隙に逃げた。走って走って、走りまくった。触れた唇が熱くて、触れてもいない頬が熱くて...意味がわからない...

「泉ーどうした?顔赤いぞ?」
「な、なんでもねーよ!」

部活に行ったら田島に言われた。それから栄口とか、水谷にはからかわれた。蹴ったけど。
部活が終わり、着替えているといきなり後ろから話し掛けられた。

「好きなんじゃないの?」
「なっ!?」

後ろから声がしたと思ったら、栄口がいた。
び、びびった...

「どうせ、浜田さんでしょ?」
「ち、ちがっ!」
「そんな真っ赤な顔してごまかせないよ?」
「ぐっ...」

なんで、ばれた。浜田なんて言ってない。なにをされたのかすら言ってないのに、なんで浜田ってわかんだよ!?
え、なに。栄口怖い。

「浜田さんになんかされたの?」
「...」
「されたんだ」

少し笑いながら言う栄口が怖い。なんで心読まれたみたいな...
つか、え!?まて。スルーしてたけど、最初に栄口、なんつった...?

「...好き?」
「ん?あぁ、好きなんじゃない?泉は、浜田さんのこと」

好き?オレが、浜田のこと?オレは、オレは...浜田なんか、好き、じゃない。
てか、まず好きってなんだ...?

「好きってなんだ?」
「えっ、そっから?」
「わ、わかんねぇよ..」
「んー、そうだなぁ...その人の事気になったり、ドキドキしたり?」

気になる...?気に、してるのかオレは...ドキドキなんか...して、ない。
そりゃ、顔が近くなればびっくりして心臓ドキドキすっけど。...あれ?

「...わっけわかんね..」
「はは、まぁ...オレは付き合うのは時間の問題だと思うよ?」
「つっ、付き合っ!?」

誰が!?オレと浜田が!?
ぐるぐるしながら考えてるオレの横を、栄口は手を振って笑いながら帰って行った。あぁ、わけわかんね...

「いずみ..」
「...え、」

え、え?えぇ??な、なんで浜田がいんだよ!
ぐるぐるする。みんな帰っちまったし...うわ、どうしよ...
そんなことを考えていると、浜田が近づいてきた。

「あの...泉...」
「、なんだよ...」
「え、と...話ってなに?」
「...は?」

話?オレが、浜田に?話なんかねぇよ。意味わかんね。
ぽかん、としてるオレに、浜田は口を開いた。

「さっき栄口と会って...泉すぐくるって、話があるらしいって言われて...」
「なっ...」

なんだそりゃ!さ、栄口...あいつ...

「っにもねーよ!」
「え、えぇ?」
「話なんかない!帰る!」
「ちょっ、泉!」

浜田の横を通り抜けたと思ったら、がしりと腕を掴まれた。
びっくりして振り返ると、浜田はオレをじっと見ていた。

「な、なんだよ...」
「あの、さ...ごめんね」
「...?なにが?」
「キス、しちゃって..」
「き..」

かああああっと顔が赤くなるのを感じた。うわっ熱っ...なんだこれ...
や、やばい。浜田にキスされたこと、思い出しちまった!!!

「い、嫌だった...よね?」
「..べ、別に?」
「えっ」

な、なに口走ってんだオレ!!!嫌に決まって...いや、別に嫌、ってわけじゃなかったけど...気持ち悪くも、なかった、し...普通気持ち悪いよな?男にキスなんか...
あ、あれ...?

「い、泉っ...」
「んだよ...」
「そ、それって...泉も、オレのこと好きって、こと?」
「...」

わ、わっかんねー。意味わかんねー。
なんで浜田はオレなんかに顔赤くしてんだよ。つか近づくな!心臓ドキドキ言、う...?
な、なんでオレ...浜田なんかにドキドキしてんだよ...

「泉...」
「な、ん!」
「いずみ...いず...」
「ん、んぅ...ちょ、はま...」

いきなり浜田の顔が近づいてきたかと思ったら、キスされた。こいつ...また...でも、嫌じゃ、ない。
気持ち悪くない...むしろ気持ちいいっていうか...って!ああああなに考えてんだよ俺!!!

「す、好き!泉が好き!」
「て、てめ...」

大声でんなこと言うんじゃねーよ!!そう叫びたかったけど、浜田の顔が近くて、妙に恥ずかしくて、なにも言えなかった。
浜田はオレの肩を持って覗き込んできた。だ、だから...顔ちけーって!!

「泉も...オレのこと、す、好き...かな?」
「...多分」
「!まじで!?」

やったー!と叫びながら抱き着いてくる浜田をなぜだか突き飛ばせれなかった。
幸せ、と言う浜田に悪い気はしないし、オレもこいつに溺れてみようか。



end.


→あとがき


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