□嘘から始まった恋
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突然だが、オレと泉は付き合ってる。
きっかけは一年の終わり、二年がはじまろうとしていた頃だ。俺は留年したから、また一年な訳だが。
そこで、同じクラスだったやつらとちょっとしたゲームをした。負けたやつは罰ゲームつきの。軽いノリでやったんだ。まさかオレが負けるとは思わなかった。
そこで勝ったやつが、言ったんだ。
“ドアを開けた瞬間いたやつに、告白しろ”
男でもか!と言ったら友人達は笑いながら頑張れと言った。
そして、春。オレは教室のドアを開けた。

「好きです、オレと付き合ってください」

どうにでもなれ!と思って言ったのが悪かった。
まさか、泉だったとは。

「い、いず...」
「...いいけど」
「え!?」

まさかOKを貰えるとは思ってなかったからびっくりした。
泉って、オレのこと好き、なのかな...?でも、なんとなく、泉でよかったと思った。
それからオレは泉と付き合っている。もう結構経つなぁ。キス、したし。嫌じゃなかった辺り、オレも泉のこと好きなんだなぁ。

「おーい浜田ぁ」
「ん?」

去年のクラスメートが話し掛けてきた。ゲームをした相手だ。なんでお前一年の校舎にいんだよ。
今から俺9組帰るんだけどー、と言えば、そいつはニヤニヤしながらオレの所にきた。

「まだ付き合ってんの?」
「は?」
「だーからさぁ、罰ゲームの」
「あ、あぁ...」

泉のことか。だけどオレは、もう罰ゲームとかどうでもいい。本気で好きになったんだ。
今も早くクラスに帰って泉に会いたいんだけど。

「まじ?長くねぇ?相手男なんだろ?ありえねー」
「うっせぇなぁ」
「でもお前まじ運ねーよなぁ、まさかの同中の時の後輩とはねぇ」
「あー、もう、いいだろ」
「へいへい、じゃあまたな」

そう言ってそいつは消えて行った。
ったく、別にいいだろ、男でも。相手が泉だから好きになったんだ。
今更泉にゲームだったなんて言ったら、怒るだろうなぁ。言わねーけど。
今はゲーム関係ねーもん。本気で、好きなんだから。
中学の時とかは女の子と付き合ったけど、こんなに好きになったのははじめて。

「浜田おかえりー」
「おーう。ん?」

教室に着いたが、泉はいなかった。
えー、なんで。いつもいるじゃん。抱きしめ、は教室では無理だけど、とりあえず泉と話したかったな。

「田島、泉は?」
「便所!浜田会わなかったんか?」
「いや...」

トイレ?でもオレ会わなかったけど...オレもトイレ行ってたし、廊下は一本道だし、なんで会わなかったんだろ...?
向こうのトイレに行ったとか?でも9組に近いトイレはオレが行った方だし...どこ行ったんだろう...

「あ、泉おかえりー!」
「おー」
「泉!どこ行ってたんだ?」
「...どこでもいいだろ」

あ、あれ。なんか泉がいつにも増して冷たい...
田島が聞いたら普通だったのに、なんで?
え、オレ、なんかした?

「いず、」
「チャイム鳴った。座れ」
「う、うん...」

とりあえず席に着いたが、泉がおかしい。
なんか目赤いし。なんで?なんでなんでなんで。
それから、泉は口を聞いてくれなかった。
なんで無視するんだよ...くそ!待ち伏せしてやる!

「よう!泉!」

部活が終わって出てきた野球部の中に泉がいて、声をかけたらすごく嫌な顔をされた。な、なんで!?
野球部のやつらはオレに一言挨拶して帰って行った。

「泉」
「...」
「なんで、無視すんの?」
「...自分で考えれば?」
「俺、ばかだからわかんない!!」
「...じゃあ別れて」
「...は?」

今、なんつった?
わか、別れる?誰と誰が?

「もういい」
「ちょ、よくない!」

素っ気なく言いながら泉はオレの横をすり抜けようとした。
オレは急いで泉の腕を掴んだ。

「...お前は、」
「え?」
「お前は、冗談だった?」
「え...」
「オレは本気だった。だけど、お前はただのゲームだったんだな」
「な、なに言って...」

そこで、はっとした。
泉はあのことを言ってるのか...?そうだとしたら納得いく。
トイレに行ったはずの泉に会わなかった。泉は、聞いてしまったんじゃないか。それで、自分のことだって、わかってしまったんだ...
でもオレは、もうゲームじゃない。

「泉...」
「離せよ、もういい。お前なんか、もう知らねぇ」
「...やだよ」
「離せって...っ!」

ぐいっ、と腕を引っ張って泉の唇を塞いだ。
好き。大好き。伝われ。

「な...にすんだ...ん、」

一度離れて、また口づける。唇をこじ開けて舌を入れる。泉の体が震えているのがわかる。
離さないように、泉の体をぎゅうっ、と抱きしめた。

「...っ、離せよ...」
「..やだよ」
「嫌だ...っやだ、やだ...っ...」

泉は泣きながらオレの胸を叩いた。
少し腕を緩めて、泉の涙を舐めとった。泉はびくりと少し動いた。

「好き」
「...嘘」
「嘘じゃない」
「...罰ゲームなんだろ」
「最初は、そうだった。だけど、今はほんとに、本気で泉が好きなんだ」
「...そんなん、」
「信じれないかもしれない。だけど、好きだよ...お願い、別れるなんて、言わないで...」

自分の体が震えるのがわかる。それに泉は気づいたのか、腕を背中に回してくれた。

「浜田...」
「好きだよ泉...」
「っ...」

不安にさせてごめん。大好きだよ泉。
その思いを込めて、泉にキスをした。泉は真っ赤になった顔をオレの胸に隠して、抱き返してくれた。
それが、嬉しくて仕方なかった。



end.


→あとがき


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