前拍手文

□終止符
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気の迷いだった。
なんて、言い訳にしかならない。
クラスでもかわいいと言われていた女子に「好き」と言われて調子に乗った。
キス、なんて、しなきゃよかった。
オレがキスしたのはこの子だけじゃないけど。3回くらい、こういうことをした。
恋人の泉はいつもそっけなくて、愛の言葉を言ってくれないけど、オレは決して不満なんかなかったのに。
どうしてオレは、こんなことを..

「い、泉...」

オレが目の前の子にキスをしたと同時くらいに、ガラッ、と扉が開いた。
目の前には、泉がいた。
女の子は泉に気がつき泉の横を早足で通り過ぎていった。
どうしよう。やばい。
オレの心臓はドクン、ドクン、と気持ちのいい感じではなく気持ち悪い脈を打った。

「帰るぞ」

泉の口から出た言葉は、オレが予想していた言葉ではなかった。
てっきり、問い詰められるのだと思った。
怒られるかと思った。最悪、別れようと言われるんじゃないかと思った。
だけどそんな言葉じゃなくて、少しびっくりしたけど、よかった。

「あ、うん...」

荷物を持って教室を出た。
いつもみたいにオレの隣で喋る泉。いつもすぎて、びっくりした。
もしかして気づいてないのかも。泉の所からじゃはっきり見えなかった、とか。
そうだ、きっとそう。
そう自分に言い聞かせた。
するといつの間にかいつもの分かれ道にいた。
あぁ、よかった。これでまた、いつもみたいに、

「なぁ、別れよう」
「...、え..」

いつもの言葉じゃ、なかった。
だって、いつもだったら、ここで、また明日って。
思わず漏れた言葉に泉は顔を歪ませた。なんで、とでも言いたそうな顔で。
オレの顔は引き攣っていた。
だって、こんなことって、

「じゃあ、」

後ろを向いて去って行く泉に手を延ばしても、その手は泉の肩に触れることはなかった。
口は開くのに喋れない。
どうして。
ごめん、泉。ごめんなさい。
謝るから帰ってきて。殴ってもいいから、怒鳴って怒って泣いてもいいから、どうか帰ってきて。
ごめんなさいごめんなさい。
オレが悪かったから、別れるなんて言わないで。
裏切ったのは自分。泉を傷つけたのも自分。
全部、オレが悪いんだ。
自分のせいなのに、苦しくて悲しくて...こんなにも、泉が好き。
お願い泉、許してくれなんて言わないから、帰ってきて。隣でまた、笑って。



end.


→あとがき


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