前拍手文
□涙
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ずっとずっと、好きだった。
大好きで、でも叶わないと思ってた。
だけど泉にオレの想いを伝えた時、泉も好きだと笑ってくれた。
とても嬉しくて、とても泉が愛しかった。
だけど最近泉はオレを見ていない。
好きな子ができたんだ、と思った。
泉はオレと話している時も上の空で、下を向いたりしていた。
それでもオレらが一緒にいるのは、泉が会話をする前にオレが話しを遮るから。
別れたくないんだ。せっかく手に入れた、手放したらもう一生手に入らないかもしれない泉の“恋人”というポジション。
そんなことを頭の中で考えていたら、泉が話しを切り出そうとした。
必死に遮ろうとしても話題が出てこなくて、強引に泉の唇を塞いだ。
そして、一線を越えてしまった。
泉はずっと泣いていた。
泉の泣き顔を見ると、胸が痛んだ。
泉にずっと『好き』『愛してる』を繰り返し言っても、泉は『やだ』『いやだ』しか言わなかった。
なぁ、どうして?
オレはこんなに好きなのに。
嫌だよ。
「っ...ひっく...う..」
泉の体を綺麗に拭いて、服を着せた。
泉は、ぐったりしながら涙を流していた。
好きなのに。大好きなのに。
「泉...」
びくっ、と動いた泉を抱きしめた。
こんなに愛してるのに、泉は他の人のものになってしまうの?
嫌だよ、オレだけの泉でいてよ。
なんでオレには笑顔を見せてくれないの?
ずっと、悲しい顔。
もう、嫌だよ。
泉と別れるのは嫌だ。だけど、泉の悲しい顔を見るのはもっと嫌だよ。
その顔は、オレがさせているんだ。
「泉...大好き..愛してるよ...」
呟きながら泉をぎゅうっ、っと抱きしめた。
泉はなにも言わず、涙を流していた。
泣かないで。大好きだから。
大好きだから、離れよう。
泉は、幸せになって。
さよなら、大好きでした。
今までも、これからも、ずっと...ずっと大好きだから。
腕に力を込めて泉を抱きしめると、泉は泣きながら小さな声で、別れようと呟いた。
さよなら、大好きな人。
end.
→あとがき
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