前拍手文

□遅かった
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大好きな人がいつも隣にいた。
相手はばか正直で、好き好き言ってくるけどオレは返せなかった。
恥ずかしくて、口に出して言う言葉はいつも真逆で。
こんなオレだから、嫌われたのかもしれない。

「泉、別れよう」
「な、んで...」

泣きそうな顔。
浜田のこんな顔、はじめて見たかもしれない。
いつもは隣で、笑ってたのに。
なんで、なんで別れよう、なんて言うんだよ浜田。
オレのこと嫌いになった?

「彼女、できたから」
「...オレは、なんだったんだよ...」

彼女?なんで。
オレがいるじゃんか。
なんでだよ、なんで、なんで...頭の中ではその言葉がずっと流れる。
だって意味わかんねぇじゃん。
好きだって言ってくれた浜田はなんだったんだよ。

「泉のことは好きだったよ。すごく。だけど、もう...好き、じゃないから」

ズキン、と胸になにかが刺さった。
すごく、痛い。
好きじゃない。
その言葉はすごく重い一言だった。

「...行けよ」
「え...、」
「..彼女、待ってんだろ...もう行けよ、」
「...うん、ばいばい」

浜田が背を向けて歩いた。
耐え切らずオレも後ろを向いた。
好き。
いつも言えなかった言葉。
こんなオレだから嫌いになった?もっと大人なら好きになってくれた?好き、って一言、ちゃんと言えたらこんなことにはならなかった?

「はま、だ...」

涙が、こぼれた。
ぼたぼたと地面に跡をつけていく。
浜田、いつも言えなくてごめん。
好きだよ、お前が。
今、お前の元に走ってこの想いを届けたらお前は戻ってくる?

「っ、...浜田!!」

涙でぐしゃぐしゃな顔で振り向いた。
そこには、もう浜田の姿はなかった。
胸がぎゅうっ、と痛い。
遅かった。もう、浜田は帰って来てはくれない。



end.


→あとがき


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