前拍手文

□ありがとう、さよなら
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「オレ、浜田が好きだ」

目の前の浜田はオレの言葉に固まっていた。
なんで、言ってしまったんだろう。
答えは簡単だ。
好きすぎて止まらなかった。
いつの間にか浜田には隣にいることを許された人ができた。
なんで、オレじゃないんだと何回も思った。
...思うだけ、無駄だった。
好きなのはオレだけだった。

「え...冗談、だろ...」
「なんで」
「だって、男同士じゃんか...あ、ありえねぇよ...」
「...冗談で、お前なんかに告白なんてしねーよ」

浜田は嘘だろ、とぶつぶつ言っていた。
はぁ、とため息をはいた。
辛い。
なんで、信じてくれないんだよ。
お前が好きなのに。こんなに好きなのに。
冗談でしか、とれないのかよ。
それとも、冗談であってほしいわけ?

「...冗談、」
「え..、」
「...嘘。冗談だって」
「な、なんだ...」

ほっ、とした浜田の顔を見るのが辛かった。痛かった。
涙が出そうになった。
ぐっ、と堪えて、浜田を見た。

「..嘘じゃねーよ...本気だ」
「...え、」

ぼろぼろと目からは雫が落ちた。
嘘、じゃない。冗談、じゃない。
浜田はオレを見てくれない。
近くて遠い、ってこんな感じなんだろうか。
すごく、辛い。

「泉...」
「もう、迷惑かけねーから...」
「え..」
「好き、お前が好きだ。だけど、もう迷惑かけねー...だから、だから...」

この先の言葉は、喉に詰まってしまった。
息苦しくて、視界がぼやけて、もう、なにがなんだかわからなかった。むちゃくちゃだった。
だけど、無理矢理喉から引っ張って、言った。

「...友達で、いさせてくれよ...」

声が掠れた。
膝に力が入らなくて、地面に崩れ落ちた。
体全体に力が入らない。
浜田が、なにか言いながら近寄ってきた。

「...ありがとな、」

好きになってくれてありがとう、そう言って浜田はオレの頭を撫でた。
やめろよ、もう、迷惑かけたくないんだ。
だから、そういうの、やめてくれ。
足に力をぐっ、と入れて、立ち上がった。
涙でぐしゃぐしゃな顔を拭いた。
目を何回拭いても涙は零れた。
だけど、頑張っておもいっきりの笑顔を、浜田に向けた。

「さよなら」

浜田を一回も見ないで走って逃げた。
さよなら浜田。
お前のこと、大好きだった。
だけど遅かった、なにもかもが。



end.


→あとがき


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