03/01の日記
01:28
赤零日常
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「………寒い」
突然彼はそう言う。
寒さどころか、温度を感じているのだろうか。零はその日も思ったのだったが、それを口に出すことはなく。
…なぜ、回りくどく言うのだろうか。
「Chilly」
「あの、」
「……ん?」
「………………、何でもない」
「………ああ」
大抵この会話が教科書の例文のように数日に何回か繰り返される。
いい加減この会話も聞き飽きたし、言い飽きた。
もっと直接的に言ってくれれば簡単なのに。
自分がそうでない事実から目を背けながらも、立派に心の中で悪態をつく。
零自身、色々な甘い言葉を考えているが、口には出せない。という面倒な性格だ。
自覚しているが、恥ずかしさも込み入り正直にはなれずにいた。
この会話が交わされるようになってから、赤木がいやに回りくどい。
意味が分からない。
自分が何をしたというのだ。
自分がじれったいと思われているのは知っているが、そこまでされるほどではないと思っている。
自分の秤でしかないが。
(………だからなのか?)
自分が思っているより遙かに、じれったさがあるのだろうか。
なら今度は積極的に…
(…気持ち悪い)
考えただけで寒気がした。
ついでに本来の寒さも感じ、ブランケットを取りに行く。
……………が、その行動は遮られ
「……………寒い」
「今ブランケット取りに行きますから」
「………」
明らか違う。と言いたげな顔の赤木。
只今半分確信、半分疑いの零。賭けはできなかった。
「……ブランケットいらないんですか?」
「零が湯たんぽになればいい」
「………っ…
………何、すればいいですか…」
精一杯の答えだった。
それに赤木はしてやったと笑みを浮かべた。
(やめられねえな)
控え目な零を落とすこの瞬間、どんな勝利の時より満たされる。
この“賭け”での勝利から得られるものはしばらく赤木のモチベーションさえ左右する。
マンネリ、とはよく言ったものだ。
だが零に飽きているわけではない。(今まで何度か同じ事を繰り返してきた)
気分で意地悪したって良いと、赤木は思う。
可愛い意地悪なら。
「………意地悪…だったか?」
その問いに
「…………とても」
と、苦笑いしてくれる零を見て、赤木はまた笑った。
「………悪いな」
おわり
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