ショートSS
□お酒は20歳から
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「カイジさん…」
「…」
飲ませなきゃ良かった。
カイジは心底後悔した。
お酒は20歳から
零が珍しく悩みがあると言うからいっそのこと色々吐かせてやるかと酒を飲み物に混ぜたのがまずかった。本当に。
最初は普通に本来しようとしていた悩み相談だった。
だが酔いが回り、グチはエスカレートしていく。
ついには泣き出してしまった。
だが泣き顔は見られたくないのか顔を手でおおっている。律儀なことだ。
こんなとこ赤木にみられたら…
そう思うとゾッとした。
といっても泣いた原因は赤木にある。
所謂男女の仲と同じ意味で付き合っているというのに殆どスキンシップがなく、1ヶ月が経とうとしている今、夜の営みも、ましてやキスまでないという。
「俺が赤木さんに好きかって聞くのは図々しいから聞きたくないけど言ってくれなきゃ分からないし俺は言って欲しい…けど…!」
「と…とりあえず落ち着け。あと顔ぐらい見せろって」
「うう…」
顔を出すため涙を我慢する零。
だが酔っていて制御できないらしく、目には涙を溜めていた。
(うおっ…女みてー…)
自分も飲んでいることを忘れていた。
危うく変な感情に流されるところだった。
『―……何』
「…俺だけど」
頭を冷やすついでに早く引き取ってもらおうとカイジは赤木に電話をする。
赤木は零がいないのを気にしていないのかと思ってしまうほど、至って普通の声色だった。
(…血も涙もねえ声だな)
『電話かけといて黙り込まないで欲しいんだけど』
「その声零に対してもそんななのか?」
『……は?』
カイジは刹那やばいと口を噤んだ。
だが、察した赤木は吐かせようと追いつめる。
『突然変なこと言い出すなんてなんかあったのか?あったんだろ。吐け』
「……零………いや…なんでも、」
『いるのか。そこに』
声色が変わった。
『…いるのか。そこに』
静かに繰り返される言葉。
だが確実に怒りが増している気がした。
「待てって…!別に何も…いや…お、俺は零を迎えに来て欲しいから電話したんだよ…」
『…その間、ついたらしばらく問いただしてやるからな』
「うっ…も、元はといえばおまえのせ…」
“ブツッ”
「!?」
切られた。話を聞かずに切ったぞ、あいつ。
カイジの酔いはすっかり醒め、青ざめとなった。