ショートSS

□神なる犬、悪魔の周期
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「はぁっ、はぁ…」

獣の匂い、汗の匂い。

(くっ…)

酷い視界のくらみと、身体の揺れ。零はこのまま腹上死すると思った。

(あぁ…くそ……)



外では犬が吠えていた






その日は朝からカイジの様子が変だった。

(寄ってこない…)

いつもなら朝っぱらから抱きついてきたりするのだが、今日は朝から家に居なかった。
帰ってきてもよそよそしく、近づいてこない。しかもずっと犬の姿のままだった。

「カイジさん…なんで人間にならないんですか?」

「…」

「…俺のこと…嫌いになった?」

「ち、…違う…っ!!、……」

応えて刹那、カイジはまた黙り込む。
零はしびれを切らし、カイジを捕まえて抱き上げる。

「や、やめっ……!」

「!……カイジさん…」

あまりにも嫌がるカイジに零は眉尻を下げ、パッと手を離した。

「ごめん。俺夕食の準備してくる」

「違…っ、」

「…?」

「っう…………くそっ!」


バンッ


「っ!!」

突然、背後が壁になった。
ハッとして見れば、目の前にはギラリと瞳を濁らせた半妖カイジ。
息を荒げ、牙をむき出しにした口からは涎が伝っていた。

どうやら零は壁に叩きつけられたようだ。遅れて背中に強い痛みが伝う。

「突然、何して…!?」

「……ッなんで…俺には周期…が、…」

「…!」

カイジの顔色が変わった。

「はぁ……ッぜろ…ダメだ…」

段々と声が震えていく。

(…やばい…!)

そう思った瞬間、カイジによって口が塞がれた。

「っ痛…んぅ…っ!」

唇から血が流れ出、牙が食い込む。


バシッ


「っ…あ…」

零は思い切りカイジの頬を叩き、これ以上の傷を防ぐ。
するとカイジは赤くなった頬を押さえ、膝をついた。

「零…ぜろ…」

人が変わったように震え、甘えた声ですり寄るカイジにやめろと零は怒る。
だが泣きながら息を荒げ、欲を我慢しているカイジを見て、さすがに零も普通ではいれなかった。
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