short story

□二つの炎
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貴方は私だけのもの。

貴方は私だけに従う。

貴方は私の為だけに戦う。

貴方には、私だけがいればいい。

貴方が望む“最強”は私だから。

もっと強く。

もっと完璧に。

そんな存在として貴方を魅了するわ。








――――ドランザーでは今以上に強くはなれない。







さあ、私を迎えに来て...!





...その願いは叶う。



「今の俺には必要のないものだ。」

待っていたわ。
私、もっと頑張れるから。
ありがとう。



どの言葉も出さない。
それ(気持ち)を口にすることを、カイは一番嫌うと知っているから。



私は、もう行く宛て何て、必要ない。

満ち足りたの心に浸みるのは執着。





私と貴方はいつでも一緒。

私と貴方はどこでも一緒。

私と貴方は何んでも一緒。

私と貴方はどうしても一緒。


私は...貴方を放しはしない。






知っている?

私はずっと独りだったの。

貴方の背中を夢見ることしかできなくて、貴方と真正面から向き合えなかったの。

だから貴方がこんなにも綺麗な瞳の色をしているなんて思わなかった。



こんなにも...もう一人の私と同じ色をしているなんて...









―――貴女はもう一人の私。




朱雀...




間違いから目を逸らす為に切り離した私の心。




でも...




伝えに来たわ。私達が本当に望んだものを。









―――白虎の爪をもぐ。

『チッ、やっぱりコイツとは相性が悪いぜ』




―――青龍の刃を砕く。

『...。』




―――玄武の甲羅を殴り続ける。

『二度と自分の不甲斐なさに後悔したくないから。』






そして道は開く。




どうして?
武器を壊したのに。
希望を打ち砕いたのに。
どうして私が凄く苦しいの?

私の氷の心が、朱雀の心“炎”で溶かされていく。



手を伸ばして待っているよ。

貴方と私が求めた物と一緒に待っているよ。

だから貴方も私も手を伸ばして!








氷は、溶けた。





私が本当に望んだものは...







「カイ!早く俺の手を掴め!」

「沈んでしまいます!」

「俺を助けようというのか...!?お前達を裏切ったこの俺を...」

「当たり前じゃないか!仲間だろ!?」

「時にはケンカだってするさ!」

「でも直ぐに仲直りネ!」

「雨降って地固まると言うじゃないですか!」

「お前達...」

「仲間のピンチを見過ごせるかよ...俺の手を掴め!!」

「俺は...」







貴方は歩き出す。

明るい方へ。






これがこそが望んだもの。


最強でも、完璧でもない、貴方が貴方で、私が私でいられる場所。


でも私は一緒には行けない。
やるべき事があるから。




朱雀。もう一人の私。
待っていてくれてありがとう。
こんな私の為に...手を伸ばしてくれてありがとう。私は闇の中で果てるわ。



でも、どうか、貴女の歩む道に光があるように...。







fin.

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