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□笑顔になれる魔法
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「月子、あ〜ん」
月子の為に愛情を込めて焼いたクッキーの1つを手に取って、俺は言った。少し躊躇らいながらも、それを口に入れるとすぐに笑顔に変わるこいつの表情。さっきまで落ち込んでいたのは嘘のようだ。

「美味しい!」
「当たり前だろ?お前を想って作ってるんだから」
「もう、錫也ったら」
「嘘じゃないよ。俺が作ったお菓子で月子を笑顔にしてやりたかったんだ。お前、小さい頃から美味しいお菓子食べたらすぐ笑っていたからな」
「それは……錫也がくれた魔法のクッキーのおかげかも。ふふ、錫也の作ったご飯やお菓子は錫也の魔法がかかってるからね」
「ああ、俺がどんな時でも、お前を笑顔にしてみせるよ。月子を笑顔にするのは俺の役目だろ?」

くしゃっと頭を撫でてやると、嬉しそうに月子は言った。

「錫也は私の魔法使いの前に彼氏だからずっと錫也が傍に居てくれる限り魔法は解けないね」
「お前、その笑顔反則。そんな可愛い顔で言われたらぎゅーってして、キスしたくなる」
ぎゅうと柔らかい月子の身体を抱きしめて、おでこにキスを落とす。次に柔らかい頬に。そして……最後に唇に。

月子は俺を魔法使いに例えたけれど、実際に先に魔法をかけられたのは俺の方だと思う。それは、月子から離れられなくなる魔法。俺はもう、こいつから離れることが出来ない。積み重なった年月もこれからの未来も。月子の隣に立つのは、俺がいい。

(哉太や羊が俺の独占病は末期だとか言っていたけど、これじゃ否定できないな…)

そんなことを考え、内心で苦笑いした。
月子を笑顔にする魔法をかけられるのは、俺だけであり続けたいと思いながら。


END
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