stsk

□優しい温もり
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錫也とテーブルに並べられた昼食を食べる。同棲を始める前までは、時間が合えばお互いの部屋を行き来したり、ご飯を一緒に食べていたけど、毎日って程じゃなかった。だけど、錫也と一緒に暮らし始めてからは違う。そのことで、彼と暮らしている実感が持てて嬉しい。


「なあ、月子」
「うん?」
「今日は6年ぶりに満月の十五夜だろ?
一緒に天体観測も兼ねて月見でもしないか?」

今日、9月12日は1年で最も月が美しい中秋の名月。
必ずしも満月とは限らないけれど、今夜は満月になるそうだ。

昨日、粟田君得意気に話していたのを覚えてる。
高校2年生の秋に羊君が文化祭の特別講師として、再び星月学園に戻って来た時に後輩の崇嗣君と忍成先生を交えて月見をした。あの時はちゃんとした満月ではなかったけど。

「満月じゃなっくって残念」
そう言った私に錫也は
「今度の十五夜の満月は二人きりで見るために取っとくって思えばいいんじゃないか?」
そういったのを覚えていたかはわからない。記憶力がいい錫也のことだから覚えているかもだけど……。



「したい!あ、そうだ。お団子作ろうよ!」
そう言うと錫也は「言うと思った」って笑った。


「やったぁ〜!じゃあ、これから一緒に材料買いに行こうよ」

「そうと決まれば、早く片付けをしないとな」

錫也の言葉に私が頷くと、錫也はテキパキとテーブルの上を片付けを始めた。



今日は私も錫也も講義がなく、バイトも休み。そんな日はどこかに出かけるか家でのんびり過ごす。勿論、二人で。お互いの時間を大切にしながら、二人の時間も大事にしようと約束した私たちの過ごし方だ。


錫也が片付けをしてくれている間、私は直ぐに出掛けられるように簡単な身支度を終わらせる。


「月子、支度はできたか?」
「うん!」

「それじゃ、行こっか」


錫也と手を繋ぎ、スーパーへと買い物に向かった。スーパーに入り、お月見に必要な材料を買い揃えてると聞き覚えのある声に呼び止められた。

「あれ?夜久と錫也じゃん」
その声の主は粟田君。続いて現れたのは梨本君。二人ともこれから帰るところなんだろう。その証拠に手には買い物袋がぶら下がっていた。

「あ、本当だ。まさかここで夜久と東月に会えるとはな〜」


「それはこっちのセリフだよ!二人に会うなんて思わなかったもん」

「粟田君たちは部活の買い出しか何かかな?」

「おう!そういう錫也たちは…ってみりゃわかるか」
「ったく、あまり見せびらかすんじゃねーぞ。さて、粟田そろそろお邪魔虫は退散するか」

「そうだな。哉太が錫也の独占病は重症だって言っていたし、邪魔するのは良くないからな」
ニッと笑いながら粟田君が言ってきた。

「そんなわけだから、また学校でな」
梨本君がそう言うと2が同時に
「お幸せに〜」
そう言って去っていった。
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