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□星空の下で
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この夜空に広がる星空を3人でどのくらい見上げてきたんだろう。
「あれがベガで…」
月子の指が星をなぞる。
それを受け継ぐかの様に哉太が次の星座を指す。
「その下にあるのがベネブ」
「そして、その横を辿るとアルタイル」
「三つ合わせて夏の大三角!」
見事に声が重なり、俺たちは笑い合う。
「夏って言ったら、やっぱりこの星座だよな!」
「7月は七夕だもんね」
「小さい頃はよく短冊を書いて願い事したよな」
「錫也が言うとオカンみたいに聞こえるな」
「そんなことを言う哉太には、お弁当あげないぞ?」
俺がそう言うと慌てて弁解を哉太は始めた。
あらかじめ、持ってきたレジャーシートを広げ、お弁当箱を囲う。
「やっぱ、錫也の作る弁解は最高だな!」
「うんうん!味も好みの味だよね」
二人して声を揃えてこういった。
「さすが、俺たちのオカンだな」
「さすが、私たちのお母さんだね」
次にくる言葉を予想していた俺はやっぱりな、と心の中で呟いた。
「そりゃ、お前たちの世話は俺の役目だろ?」
そう言うと、哉太は「錫也は俺たちのオカンだからな。当たり前だろ」って返してくる。
「錫也がお母さんなら私たちずっとお母さん離れができないね」
なんて無邪気な笑顔で笑う月子。
「月子みたいな可愛い娘なら俺も娘離れができないな」
「もう、錫也ったら」
冗談に隠した言葉にこいつは気づいてないだろう。だけど、今はそれでいいと思う。この心地いい居場所を失いたくないから。
のんびりと星空を見上げ天体観測を再開して少し経った後。月子が急にそわそわし始め、腕時計をチラチラ見ているのに気がつく。
そして、哉太と目配せをして互いに頷く。
「錫也」
急に二人に名前を呼ばれた。なんだろうと思いつつ、次の言葉を待つ。二人が一斉に言った言葉。
「お誕生日おめでとう!」
それは、俺の誕生日をお祝いする言葉だった。思いがけないサプライズに驚いた。まさか、0時ちょうどにこうして祝ってもらえるとは思わなかったから。
「錫也、びっくりしただろ?」
「今回はね、錫也を驚かせようって哉太と二人で考えたんだよ」
「月子、哉太。ありがとな」
「私の方こそありがとうだよ!錫也にはいつもお世話になってるし」
「俺も。錫也、オカンになってくれてありがとな!」
ニッと哉太が笑う。
それに呆れながら俺は苦笑いをした。
「だから、オカンオカン言うなよ。それに、哉太のお母さんになった覚えはありません」
「そんなこというなって。錫也は俺たちのオカンなんだからさ」
「はいはい」
「あ、流れ星!」
隣で俺たちのやり取りを見ていて笑っていた月子が夜空を指す。ほんの一瞬、それは夜空に流れて消えていった。
「本当に一瞬だよなぁ」
「今年は錫也にとっていい一年になるね。だって誕生日に流れ星が見れたんだもん」
「俺は、お前らが祝ってくれたらそれだけでいいよ」
来年も再来年も、この先も二人と一緒に笑い合えたらそれだけで俺は幸せな気がしたんだ。
END