オトメイト
□僕ノ物
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「早く使用人なんて辞めちゃえばいいのに」
雅が呟いた言葉にはるが反応した。
最初の頃に彼によく言われた言葉。
「雅様……?」
何か自分に至らない点でもあるのか。
それとも、先日新しく入ってきた使用人に気に入らない人がいたのだろうか。
思考をめぐらせるが、はるが入って来てから雅ははる以外の使用人をいじめてるのを
はるは見たことがない。
彼女の後から入ってきた新しい宮ノ杜の使用人は何拾人もいるが千富やたえからも他の兄弟たちから今いる使用人ではる以外に雅の被害にあってる使用人を聞いたことはないのだ。
雅により辞めさせられた使用人は数え切れないほどいると聞いたが最近ではないようなことを使用人頭でもある千富が言っていたのをはるは思い出す。
(もしかして、私の他にも雅様のいじめに耐えてる人がいるのだろうか……?)
「はる」
「はい、何でしょうか。雅様」
「ねえ、早く使用人なんて辞めて僕と結婚しない?」
雅から予想外だった台詞を言われ一瞬戸惑ったはる。
(雅様と結婚……。私と彼とじゃ身分が違いすぎる。私は使用人で彼は時期当主候補の一人の前にこの宮ノ杜家の人間。前に雅様に言われたけれど、天国と地獄ほどの差があるのに?)
まだ舞踏会での事故を責任もっているのだろうか。あの舞踏会で事故とは言え、接吻をしてしまった。その責任を取ると言い出した雅は結婚を前提に付き合おうと言い始めた時ははる自身驚いた。
何度も自分を辞めさせたがり、嫌がらせをしてきた雅。触れられることすら嫌がっていたのに今では当たり前のようにはるに触れてきたりするのだ。
人に触れることも触れられることも気持ち悪くなるから嫌だがはるだけは気持ち悪くならないといい触れてくる。
その変化が嬉しくもあり、はるの胸を苦しくさせた。
「またそのようなことを……。私が雅様の専属になることで納まったじゃないですか」
平然を装い言おうとしたが、声が少し震えているのが自分でも判る。
雅ははるの返事に不満そうな顔をして溜息を吐いた。
(まったく、馬鹿な奴。はるは僕の物なんだからそれをはる自身がわかってくれないと困るんだけど)
「でも、はるは完璧に僕の物になったわけじゃないって気がついちゃったんだよね。だから、使用人を辞めて僕だけのはるになって。これは命令なんだからね!今は当主の座を手に入れてないから無理かもしれないけれど。この戦いに勝つのは僕だし。僕が当主の座を手に入れたら、絶対にはるに使用人を辞めさせて僕の物にするんだから覚えておくように。いい?」
はるとの距離をかなり詰めて問いかけた雅。彼との距離の近さが舞踏会で接吻してしまったことや博覧会に行った際、彼から接吻されそうになったことを鮮明に思い出さされた。
混乱して、上手く言葉を喋れずに顔が赤くなった はるの反応を見てくすりと意地の悪い微笑していたのをはるは知らないだろう。
「くす……。今すぐじゃないから安心していいよ」
「ま、雅様……っ!またからかったのですね!」
「何言ってんの。本気に決まってるでしょ」
「……っ」
(最初とは意味が違うけれど僕がはるをやめさせることが出来るんだし、楽しみだなぁ)
「じゃ、僕はちょっと銀座に用事があるから出かけてくるよ」
「は、はい!いってらっしゃいませ、雅様」
はるに見送られながら雅はご機嫌な表情で部屋を後にした。
END