オトメイト

□最後に君に逢いたかった
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そんなことを思いながら総司は、部屋の外に眼を向ける。
朝からずっと降り続けている五月雨。
この雨が心に宿る想いも流してくれればいいのに、と思いながら眺めていた。
そうすればどんなに楽なんだろう。
(近藤さんの役に立ちたいのに、これこそ足手まといじゃんか)
何もないに等しいこの用意された部屋で一向に治りそうにもない病の回復を待つ。
ただ、医者の診断を受け、食事を取るか後は寝ることぐらいしかない。
他には咳に混じった血を見ては自嘲を浮かべるだけ。
その度に、ただここで散るのを待つだけみたいだ、と彼は思う。
(まあ、覚悟はしていたけど)

ただ命の灯火が消えるのを待つ。
かつて、剣を腰に差して数え切れぬ人々を斬ってきた自分が このような散り方をするとは予想しなかったが。
(これが今の僕――新選組一番組長・沖田総司、か…。こんな身体じゃ剣も握れもしない)

何度そう思ったことだろう。 思うたびに、なんとも言えない感情がわいてくる。


もしも、願いが叶うとしたら
たった一度だけでいい。
千鶴ちゃん。君に逢いたい。

ひだまりのような笑顔を見たくて。
君の声が聞きたくて。
――もう最期でも。



叶うなら
「最期にもう一度 君に逢いたい」
それは、彼の想いと共に散った願い。


END
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