オトメイト

□休日
2ページ/3ページ


「一さん、お待たせしました」
「たいしたことじゃないから気にするな」
「ですが、私・・・」
約束の時間まで寝過ごして、その揚句に迎えに来てもらったのが申し訳なくって。
「千鶴のことだから遅くまで勉強していたのだろう?」
「どうして――」
分かったのですか?
そう言おうとしたが、言い終わる前に一の声が重なる。
「夜中に部屋から、千鶴の部屋から電気が付いているのがわかった」
一と千鶴の部屋は向かい合わせになっている。
だから、彼の部屋から彼女の部屋の様子がわかってもおかしくはない。それに気付いた千鶴は「あ…」と声を漏らす。
「そんなことより、千鶴。朝食がまだだろう?俺もまだだから簡単なものでよければ作るが」
「はい!お願いします」
それから、二人は場所を離れ玄関へと向かい場所を移動する為に外に出た。
彼は両親が不在の為、鍵をポケットから鍵を出し、ドアを開ける。
家は隣同士なのだが、戸締まりをきちんとするのは真面目な彼の性格ゆえだ。
「お邪魔します」そう言い靴を揃えてリビングへと向かう。
「千鶴、準備が出来るまでそこにある椅子に座って待っていてくれ」
「はい」
彼女の返事を聞くと台所に行き、食事の用意をするために置いてあった紺色のエプロンをかける。
(かっこいい…)
一の姿に見惚れ頬が朱に染まるのを感じた。

彼のその姿を見てぼーとしている千鶴に気付いた一は不思議そうに尋ねる。
「千鶴?どうしたのだ?」
「なんでもありません!」
(見とれていましたなんて恥ずかしくって言えない…)
「そうか。ならいいが…無理はするな。お前は頑張りすぎるところがあるからな」
彼女が己のエプロン姿に見とれていたなど思わず、具合が悪いのかと勘違いした一はそう言葉をかける。

そして再び遅めの朝食を始める為に作業に取り掛かった。材料や調理器具を出し調理を手際よく始める。まず、まな板を敷き、包丁を調理器具が入っている所から取り出す。次にその包丁をまな板の上に置いた。冷蔵庫を開け、入っているトマト1個と卵を2つ取り出し冷蔵庫を閉め、まな板の近くに置きにいく。そして、半分になっているレタスを持ち準備を開始した。
「千鶴、悪いがそこの食器棚から皿を2枚出してくれぬか?」
わかりました、と言うのと同時に椅子から腰を上げキッチンルームの方へ足を運ぶ。
手前にある食器棚の右側からお皿を2枚取り出し、彼に渡す。
「一さん、どうぞ」
「ありがとう、千鶴」
「いえ、他にも私に手伝わせて下さい」
「いいのか?」
「もちろんです!」
手伝わせてほしいと言った彼女に遠慮がちに返事をすれば、当たり前というような笑顔で返事が返ってきた。
では、と一が言い千鶴に指示を出す。
それから二人は互いに準備を始めた。
千鶴が任されたのは、レタスを剥いてお皿に入れることとトマトを切ること。対する彼は、先程冷蔵庫から出した卵を割りフライパンの上に乗せる。出来上がったのは目玉焼きだ。
水きりをし、適度な大きさにしたレタスをお皿の上半分に敷くように置く。
その右半分には、トマトが食べやすいようにカットされた大きさで乗っている。
反対の左半分には、冷蔵庫に入っていたポテトサラダ。きっと昨晩の残りものなのだろうと彼女は予想する。

テーブルに二人分の朝ごはんが用意される。
千鶴と一は向かい合うようにして座り、少し遅い朝ごはんを口にした。


END
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ