オトメイト

□休日
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朝の暖かい日差しとベッドの柔らかさや布団の温もりが千鶴を心地よく眠りの森から脱出することを拒ませる。重たい瞼をうっすらと開け、淡い水色の携帯電話のディスプレで、時間を確認した。そこには、5時12分と表示されている他に本日の日付と現在、待受画面にしているシンプルな画面のみ。


(まだ、寝ていても大丈夫だよね)
それに、今日は日曜日で学校もない為、起き上がらずに寝ることを決め、再び瞼を閉る。それから、数時間くらい経ち、千鶴は自分の名を呼ぶ声で目を覚ました。

「千鶴。起きろ」
ずっと幼い時から聞いてきた声。
この声の主を千鶴は直ぐに、誰だか判る。
一見、ぶっきらぼうな言い方な感じに思えるが、優しい声音。
「一さん…?」
閉じていた瞳をゆっくり開け、その人物の名を千鶴は呼ぶ。
彼は千鶴より3つ上の幼馴染だ。
「あぁ。起きたみたいだな。おはよう、千鶴」
「おはようございます、一さん」
あぁ、と返事をすると一は続けてこう言う。
「千鶴、俺は下にいるから着替えたら来い」
手短に用件を述べると一は部屋から出て行き、すたすたと階段を下っていく。

親同士が友人で家が隣なこともあり、小さい頃からよく一緒にいることが多かった。
今でも、互いの家を行き来することがしばしばあったりする。今日は千鶴が定期テストが近くなってきているのもあり、勉強を教えてもらう約束を先日交わしていたのだ。
千鶴は、枕元に置いてある携帯に手を伸ばす。時刻を確認すれば9時半を過ぎており、その他には、一からの着信があったことが表示されていた。
きっと、約束していた9時になっても来ない千鶴を心配して電話したのだろう。
予定では、彼の家で勉強することになっていたのだから。
ベッドから起き上がりあらかじめ寝る前に用意していた服を取り出し、着替える。そして、勉強道具が詰まっているバックを持ち彼が待っているだろうリビングへと足を運ばせた。
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