オトメイト

□1秒の幸せ
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この幸せが長く続くとは思えない恋だが、それでも千鶴と総司が共に過ごした時間の流れはあの頃とは違い穏やかな日々を送ってた。
けれども、長い人生の中ではそれはごく僅かな時間でしかない。
いつ訪れるか判らない永遠の別れ。
この恋に長くないだろう期限があることは総司が抱えた病を知った時から千鶴は覚悟はしている。

「ねぇ、千鶴ちゃん」
「何ですか?総司さん」
彼女の名を呼べば優しい声で自分の名前を呼ばれる。
「ん?呼んでみただけだよ。」
そして総司は彼女の背中に手を回してぎゅっと温もりを確かめるように抱きしめた。
「総司さん??」
「幸せだなぁって。」
千鶴は意図が掴めない総司の台詞に無言のまま彼の背に回した手で着物をぎゅっと握る。
このまま消えてしまわぬように。
「あの頃はこんな平穏な日々を過ごして幸せを感じるなんて思わなかったし。」
「・・・総司さんは後悔してるのですか?」
恐る恐る彼女が彼に質問をすれば彼は
してないよ、と微笑み続けて
「後悔するわけないよ。今の僕には君が隣にいなければダメなんだからね。」
そう言うと総司は千鶴との近かった距離をさらに縮め、2人の距離はなくなり唇に互いの温もりを感じる。
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