ブラコン

□はじまりのCeremony
1ページ/2ページ



 棗さんと出逢ったのは、両親の結婚式だった。
まだわたしにキョーダイがいたこと。
双子だと思っていた椿さんと梓さんが彼と三つ子だったこと。
この事実に少し驚いたのを覚えてる。



 愛を誓う場所で出逢った人。
めぐり逢えたあの日から、わたしの中で
少しずつ他のキョーダイとは違う感情が
芽生えていったのかもしれない。

  
 わたしはキョーダイの中で一番棗さんのことを頼っていたと思う。
 わたしが戸籍のことで悩んでいた時。
傍にいて支えてくれたのは棗さんだった。


『…俺がオマエのそばにいる。
だから居場所がないなんて言うな』

 彼の腕に抱かれた時。重なった唇の感触。
彼から与えられる体温に安心したのを覚えてる。
   
 この時から、わたしの中で棗さんの存在が
確実に形を変えていくのを感じた。
 
 それから月日が経ち、わたしが棗さんを選んだことで、
光さんが言っていた【ブラザーズコンフリクト】は静かに幕を閉じた。


 棗さんと想いが通じてから数年。

  
 彼と出逢った場所が、彼と愛を誓う場所になる。

「……懐かしいな」
「ここで初めて棗さんと会ったんですよね。
チャペルに入ったら棗さんがいて」

 わたしが好奇心でチャペルの方へ行き
ドアを開くとその中で棗さんが立っていた。
 それが、棗さんとわたしの出逢いだった。

 ……もしかしたら。

(あの日から、始まっていたのかも)

「何、ニヤついてんだ?」

 浮かんだある言葉を、わたしは棗さんに告げた。

「全部、運命だったのかなって思ったんです」

 そう告げると、一瞬、棗さんは驚いた顔をしたけれど
すぐに嬉しそうに笑ってくれた。
そして、言葉を続ける。

「今度は偶然じゃなくって、わたしの好きな人が
わたしを、ここに立って待っててくれるんですよね。
ここで出逢って、ここからまた新しく始まるって考えたら素敵だなって。
そしたら、運命みたいだなって思っちゃいました」

 えへへ、と笑うと、気がついたら棗さんの腕の中にいた。

「棗さん……?」
「……オマエ、可愛すぎ。
俺も同じことを思っていたから、
オマエからその言葉を聴けて嬉しかった」

 棗さんも同じことを思っていたことが、嬉しくって。
わたしは棗さんの背中に腕を回し、抱きついた。

「わたしが好きなのは、棗さんだけです。
これからも、それは変わりません。
だって、私の居場所は棗さんのところですから」

 少し背伸びをして、自分から
棗さんの唇に顔を近づけ、触れるだけのキスをした。

「少し早いですけれど、誓いのキスです!」

 突然のことに反応できなかった棗さんに
誇らしげにわたしは言った。
 中々、見られない棗さんの姿を見れて満足していたけれど
それは束の間のことで。
 棗さんに腕を引かれキスをされた。

「全く……。オマエにはかなわないな。
人がせっかくキスするの我慢していたってのに……。
責任、取ってくれるだろ?なぁ、絵麻」

 意地悪そうに耳元で棗さんが問う。
腰に回された腕が、逃がしてくれないことを悟って瞳を閉じた。

「俺は必ず絵麻を幸せにする。
俺がオマエの傍にいる。
絵麻、オマエの居場所はずっと俺のところだ。
他の誰にも譲らないし、そのつもりもないからな」


 その言葉と同時に、優しく唇が重なるのを感じた。

「俺からオマエに誓いのキスだ。
……まだ本番じゃねえけどな。
何度でも誓ってやるよ」

 遠くから、ベルの音が鳴り響くのを聴きながら、
もう一度、わたしたちは二人だけの誓いのキスをした。


END

2014/04/16
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ