ブラコン

□理由なんてなくとも
1ページ/2ページ

 平日の午前。今日は大学の講義がない。
なので、昨日は課題を終わらせた後、クリア寸前だったゲームを遅くまでプレイしていた。
そのため、少し遅めの朝食をリビングで取り、片付けを終わらせたところだった。


「おはよー★」

 椿さんの元気な声がリビングに広がる。

「おはようございます。椿さん」
「起きてから、一番最初に大好きな妹と書いて
カノジョに会えるとかラッキー★
これはイベント起こしてフラグを回収するべき??
ってわけで、絵麻。今日、大学休みだろ?
俺、今日オフになったんだよねー。
だ・か・ら、一緒にプラネタリウム行こーぜ★」
「え?プラネタリウム、ですか?」

 椿さんからのデートのお誘いは嬉しい。だけれども、
なぜ、急にプラネタリウムが出てくるのだろう。場所に不満があるわけではない。
彼と付き合い始めてから数年が経つ。
その中の会話で一度も、
プラネタリウムの話題になったことは全然なかったし、
デート先の候補に選ぶことはなかった。だからだろう。驚き、
思わず聞き返してしまった。

「ちょっと、何その不思議そうな目!ひどくない??」
「ごめんなさい。深い意味はないんです。
ただ、今まで行く機会もなかった場所で急だったので……」

 小さい頃から、パパが不在の時が多く、ひとりで家にいることが多かったし。
プラネタリウムといえば、学校行事くらいでしか行くイメージがなかったのもある。

「だよな〜。俺も今回のコトがなきゃ、行く機会なかっただろーし」
「椿さん。どうして、プラネタリウムに行こうと思ったのか教えてもらってもいいですか?」


 わたしは、最初から疑問に思っていたことを彼に
告げる。なんとなく、確証はないけれども。
ただのデート先に椿さんが選んだとは思えなかった。
 ……何か理由がある気がする。

「ヒ・ミ・ツ★ んー、そうだなぁ……。
プラネタリウムでロマンチックな夜のシチュを借り絵麻だけに特別、いい声で愛を囁いてあげるため?」
「もう!椿さん!そんなことのためだけに行くなら行きません」
「えー、ダメ??遠慮しなくっていいんだぜ?」
「ダメです。遠慮もしてません。そのかわり、ちゃんと理由を教えてください。さっき、今回のことがなかったらって言ってましたよね。だから、椿さんが行こうって思うような出来事があったんだと思いました。……違いますか?」
「あたり。あーあ、せっかく絵麻を驚かそうと思って何も言わずに連れて行こうとしたんだけど、残念」

 そういうと、椿さんは理由を話し始めた。
話を聞くと、椿さんが出演している作品と、プラネタリウムがコラボをしているらしい。
 もともとその作品は、女性向け作品の一つで星座を題材としている作品のようだ。
その作品とプラネタリウムがコラボした。
 期間限定で、各キャラクターの星座に基づく話を上映しているらしい。
それがどのように仕上がっているか自分の目で確認したいとのことだった。

「つーわけで、絵麻にも見てほしい。
俺の声が好きだと言ってくれた絵麻に。
どんな役でも見ていてほしいし、聞いてほしいから。いいだろ?」
「もちろんです。断るはずないじゃないですか」
「でもさ、絵麻が好きな作品のものじゃないし、正直、興味出なくって断られたらどうしようとか
うなずいてくれるか自信なかったんだよ」
「椿さん。わたし、言いましたよね。椿さんの声で、椿さんが演じたキャラクターが見たいって。それは、どの作品でも変わりません。だって椿さんが好きだから。だから、行きたいです。椿さん、楽しみにしてますね」
「ありがとう。絵麻。
じゃあ、出かける支度してしゅっぱーつ★」
「はい!」

 理由なんてなくっても、椿さんと一緒にいられるなら、それだけで嬉しいんだけれど、今は言わないでおこう。
と、思いながら私は椿さんに手を引かれながら微笑んだ。




おわり

20131109
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ