遙かシリーズ

□特権
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 総司がリビングに入ってすぐに視界に入ったのはソファーに身を預け、横たわっているゆきの姿だった。ゆっくりと彼女の近くへと足を忍ばせる。 

「ゆきさん。起きてください。こんなところで寝てると風邪を引いてしまいますよ」

 寝ている彼女に声をかけるが、反応はない。穏やかな寝息とあどけない寝顔。

「かわいいゆきさんの寝顔を見るのもいいですが……。僕以外の誰かに見られるのは嫌なので、そろそろ起きてくれませんか?」

 そう言うと総司は、眠っているゆきの唇にそっと唇を重ね合わせる。ゆきは、意識が戻り始めたのと同時に、唇に暖かな温もりを感じた。閉じていた瞳を開ければ、目の前には愛しい人の姿。

「総司さん……?」
「はい。目が覚めたようですね。ゆきさんが僕の口づけで目覚めてくれてよかったです」
 さらりと笑顔で言った総司の言葉に、先ほど感じた暖かな温もりの正体をゆきは悟り彼女の頬が一気に熱を帯びたのを感じる。


「ゆきさんがあまりにも無防備に寝ていたのが悪いんですよ。今日はたまたま僕が来たからいいですが、僕以外の人にゆきさんのかわいい寝顔を見られるのは、いやなのです。あなたのかわいい寝顔を見れるのは僕だけの特権ですから」

 再び総司の唇がゆきの唇を覆い、離れる。

「約束、ですよ」


 そして、念を押すように言った総司の言葉にゆきが頷くと彼は満足そうに微笑んだ。


おわり
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