遙かシリーズ

□ お菓子よりも魅惑的な
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 総司の横で、桜餅を美味しそうに食べているゆきの横顔を見つめる。彼が彼女を見つめる視線の方が、ゆきが頬張っている菓子よりも甘そうだとこの光景を土方が見ていたら言うだろう。

「本当にゆきさんは、甘いものが大好きなのですね」
「はい。甘いものは大好きです。海外に留学していたのもあって久々に和菓子を食べえれて嬉しいです。総司さんは本当にお茶だけでいいんですか?ここの桜餅すごく美味しいのにもったいないです」
「はい。僕は甘いものも好きですが、この桜餅より甘くってやわらかいものを知ってますから、後でそれを頂こうかと」
「それは何ですか?私も食べたいです」

 甘いものと聞き、瞳を輝かせゆきが問いかける。その様子に、くすりと総司は笑う。

「それは、ゆきさんでもだめです。僕だけの特別なものですから」
「総司さんって、たまにずるいです」

 先ほどまで、瞳を輝かせていたゆきだが、
今度は、むう。と口をとがらせていた。

「…気になりますか?」
「もちろんです!」
「では、いただきます」
「あ……」

 ゆきが頷くとほぼ同時に重なる唇。それは、一瞬のようで長くて。どのくらい時間が経ったのか彼女はわからない。


「ごちそうさまでした」
「総司さん!人前で何度したら恥ずかしいって言えばいいんですか…」
「僕が食べたいものが何か知りたいと言ったのはゆきさんですよ。僕が好きなのは甘くって、やわらかいこの愛しい感触です」
「やっぱり、総司さんは優しいですけど、時々、意地悪でずるい」

 彼女が、恥ずかしさで頬を染め小さく呟いた。

END
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