遙かシリーズ

□弁慶誕生日20120211
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海がよく見える丘で眠る弁慶の両親に弁慶と望美は再び会いに来ていた。どうしても今日、ここに来たいと望美が弁慶に言ってきたのは数日前。

お墓の前に花を添えて、手を合わす。

「弁慶さんを生んでくれてありがとうございます。私が弁慶さんを幸せにできてるかはわかりませんが、これからも弁慶さんを支えられるように頑張りますね」

「望美さん……」


望美の口から紡がれた言葉。
生んでくれてありがとう、この言葉を両親に言う人などいただろうか。驚いてとっさに彼女の名を口にした。


「弁慶さん、生まれてきてくれてありがとうございます」

「……っ」

生まれてきてくれてありがとう。そう微笑んだ彼女への愛しさと弁慶の中の嬉しさが増して思わず望美を抱き締めた。


「ありがとうございます。僕を選んでくれてありがとう。僕に君と生きる未来をくれてありがとうございます」

弁慶が望美に感謝の言葉を送ると、彼女の瞳から涙が流れ頬を伝い始める。それに気がつくと、弁慶は優しく外套の中へと彼女を招き入れた。小さい声で、弁慶の名前を呼び彼女はぎゅうと弁慶の衣の裾を握り、涙を流す。けれど、それは悲しみからではなく、嬉しさからくるもので。彼の鼓動や温もりを感じて、弁慶が生きてる証を噛み締めた。
望美が弁慶とここに来たかったのは、本日が弁慶の生まれた日だと、ヒノエの父親であり、弁慶の兄でもある湛快に聞いたから。
彼を生んでくれた両親にお礼が言いたかった。ただそれだけの理由だ。

「これなら君の泣き顔を誰にも見られませんから。もちろん、最後に君の涙を拭うのは僕の役目ですよ」


「弁慶さん……。ありがとうございます。もう大丈夫です。弁慶さんとここにいれることが嬉しくって…私、弁慶さんの両親の分も弁慶さんを幸せにします」

「まったく、君は……。僕はもう十分、望美さんに幸せにしてもらってますよ」

「まだまだこれからですよ。きっと、この先、もっと幸せな事が待ってます。だから、これくらいで満足しないでくださいね」

そう言って、彼女は微笑んだ。


END
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