遙かシリーズ

□one day story
1ページ/2ページ



望美とヒノエは肩を並べて歩いていた。望美が出掛けようとしていた矢先、ヒノエが現れ、同行すると言ってきたから。

「ねぇ、私についてきて良かったの?」

怨霊がいつ襲ってくるかわからない。それでも望美は一人で戦えるだけの力はあると思っている。それだけの力があることもヒノエは知っているはずだ。

「言っただろう?いつ怨霊が襲ってくるかわからないから、一人で姫君を歩かせるのが心配だって。それに、姫君と二人きりで出掛けるのをオレが見逃すハズないだろ?オレ以外の野郎のためだってのが妬けるけど」

「もう!譲くんは私の弟分みたいな存在なんだから心配して当たり前でしょ?」
「弟分ねぇ……」
「……?」

事実、そう思っているのは目の前の少女だけなのを望美は気づいてないだろう。もし気がついてるとしたら、彼女の行動はあの年下の幼なじみには酷にすぎない。意味ありげに言った彼を不思議に思ったが、その理由がわからずに望美は首を傾げた。

(不憫なヤツ)

「まったく、罪作りな姫君だぜ」
そう呟いた言葉は彼女の耳に届かずに消えていく。

「うん?なにか言った?ヒノエくん」
「いや?その弟分を心配するくらいオレの事も気にかけてほしいって思っただけだよ」
「そんなことばっかり言うんだから……」
「そんなことじゃなく、一大事だぜ?オレの姫君がオレ以外の野郎ばかりを気にかけてやきもちをやかないわけないだろう?」
「ばか……。そんなことばっか言ってると置いていちゃうからね」
顔が朱に染まるのを誤魔化すように、視線を反らして望美は言う。その反応を見てヒノエはくすりと笑みをこぼした。

「なら、オレはお前を追いかけて、口移しでオレの気持ちを伝えようか。そしたら、オレの本気を姫君は信じてくれる?」
そっぽを向いた彼女の手を取り、自分の方に振り向かる。片方の手は逃げ場を作れないようにしっかりと腰を抱いて問う。

「え……」
「ふふ、赤くなった」
「だって、ヒノエくんが!」

彼女の腰に回していた片手を離す。

「悪い悪い。姫君を口説くのは二人きりの時にしとくよ。照れた姫君の顔を見るのはオレだけの特権だしね。それと、そんな無防備な顔を他のやつらに見せたらダメだぜ?」

「ヒノエくんだからだもん……」
ぼそっと望美が呟いた言葉を聞き取ったヒノエは、嬉しそうに笑った。

「じゃ、行こうか。鎌倉はそんなに詳しくはないけど、今日1日をサイコーの日にしてやるよ。お手をどうぞ、姫君」

望美に手を差し出すと、彼女はヒノエの言葉に頷き、手を重ねる。再び歩き始めた二人は最初の目的地へと足を進めるのだった。



END
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ