遙かシリーズ

□花に願いをこめて
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「カリガネ頼む!一生に一度だけのお願いだ!」

サザギが頭を深く下げた。その様子にカリガネは呆れて溜息を吐く。

「……断る」

「そんなことを言わずにそこをなんとかっ!
なあ、頼むよ〜。カリガネ〜」

いい歳をして縋りついてきたサザキを見て本日2回目の溜息を吐いた。

「だいたい、これで何度目の願いだと思ってる」
何かとカリガネに頼む時に、サザキは『一生に一度だけの願い』と言ってくる。一生がいくつあるんだ、と思ったのはこれが初めてではない。

ギクっとわざとらしい反応をサザキはして、いじけ始めた。その仕草を見て、しょうがない、と思いながらカリガネは言う。

「……で、その願いとは何だ。用件によっては手伝う」

カリガネの言葉を聞き、先程まで、しょぼくれていたのが嘘のように目が輝いている。

「最近、姫さんが元気ないだろ?だから、姫さんを喜ばしたいんだ」

千尋が近頃、元気がないのはカリガネも知っていた。そして、原因も。皆には、心配かけまいと笑顔でいる彼女だが明らかに、心から笑っている所を暫くの間誰も見てない。

「具体的には何をするんだ?」
サザキ個人の勝手な願いならば、首を横に振ろうと思っていたが千尋のこととなったら話は別だ。

「おう!それは……」


******************


両手に抱えきれないほどの千紫万紅の花を抱えて空を飛び、千尋の自室がある近くまできていた。


「なあ、上手くいくと思うか?」
「大丈夫だろう」
蒼い空に風も強く吹いてない。
天候にも問題ないだろう。

「でも、驚かせすぎて姫さんに嫌われたらどうしよう」
色々想像し始めて、わたわたしてるサザキに
また溜息をカリガネは吐いた。

「うるさいぞ、サザキ。声を控えろ」
「あ、ああ……。でも〜」
「でもじゃない。静かにしろ。ここで二ノ姫にバレたら意味がない」

外が騒がしいことに気がついて自室の外に出てきた千尋に先にバレてしまえば作戦が上手くいかなくなってしまう。

「……わかったよ。じゃ、いっちょやるか!」
「だから、声がでかいと言ってる」
「お、おう。すまん」

わざとらしく、咳払いをし深呼吸をした。

「姫さーん!」


千尋が自室にいると外の方から呼ばれたことに気が付く。

(サザキ……?)

自室の外へ出ると千紫万紅の花が風に乗って降ってくる。

「うわあ、綺麗」

空を仰ぐとサザギとカリガネが翼で風を送り
花を降らしてるのが見えた。元気になって早く微笑んでほしい。そう願いを込めて。

千尋が喜んでるのに気が付いたサザキはにっと笑う。それにつられるかのようにカリガネもゆっくりと柔らかな微笑んだ。


「ありがとう」
空高くにいる二人に届くように久々の心からの笑顔と共に言う。
その微笑みは、サザキやカリガネが今までに見てきたどんな宝にも劣らない輝きだった。




END
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