遙かシリーズ

□優しく降り積もる淡い恋
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『必ず、ゆきさんに逢いに行きます。
ですから、ゆきさんは向こうの世界で待っていてください』

あの日、交わした彼女との約束。
きっと、ゆきは総司のことを待っているだろう。彼女の元に向かうと約束した言の葉は決して嘘ではなく総司の願いの方が正しい。

(ゆきさん、あなたに逢いたい)


そう強く願った時だった。

「総司」
聞いたことのある声に名前を呼ばれる。
声はするが、姿が見えない。
「この声は……。朱雀ですか?」
「はい。お久しぶりですね」
彼の名を呼んだのは、彼が加護を受けていた四神の朱雀だ。そして、返事を返すと同時に朱雀は、本来の姿ではなく、人形(ひとがた)となり、総司の前に現れた。

「総司。あなたは、神子に逢いたいと心から思ってますか?」
「勿論です」

朱雀の急な出現と問いかけに少し動じた総司だが即答で是と答えを出す。
新選組に戻って戦が続いた中で、ゆきを想わなかった日など1日たりともないのだから。


「では、その願い、私が叶えましょう」
「それは、どうゆうことですか?」
「そのままの意味です」
「でも、僕は……」
ゆきに逢えたとしても、もうすぐこぼれてしまうだろう命だ。そんな自分が、彼女を幸せにできるのか。逢いたいという気持ちと、逢わない方がいいんじゃないかという思考が交差する。
「この世界で受けた呪詛でも、神子の世界に行けばその効力はなくなりますよ」
総司の気持ちを汲み取ったのか、目の前にいる神は言う。
「それは、本当なのですか…?」
「私が嘘をつくとでも?」
「そういうわけではないのですが……」
「まあ、いいでしょう。総司。あなたの答えはどうしますか」
「僕は―――…」

彼が目指すのは、愛する人がいる場所。彼女への想いが彼の道しるべとなり愛しい人の元へ辿りつくのだろう。それが、遠い時空の中でも。


END

Title By 「恋したくなるお題」さま
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