遙かシリーズ

□果たせぬ誓い
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彼女を例えるならば、籠の中にいる鳥と変わらないだろう。

金色の長い髪に蒼い瞳を持ち合わせた少女。
彼女はこの国を納める神子だ。そして、必要があればその身を神に捧げなければならない。
彼女を神子と崇めながらも、それを当然のように思っている人々を彼は理解できないでいる。

当たり前だ。
月読の力を持つこの青年にとって、彼女は神子ではなく、たった一人の大切な少女なのだから。

「ねぇ、月読の君」

「吾妹。どうしたのだ?」

「私は幸せよ」

「また急に、貴女はそのようなことを……」

「だって、そう思ったのですもの」

彼女らしい返答に、彼からくすりと笑みが溢れる。


「貴方がいるから、私は例え籠の中にいる鳥と同じでも、幸せでいられるの。貴方といる時は自由だと感じられるから、私は幸せよ」


彼の考えてることを見透かしたように彼女はきっぱりといい放った。


その言葉に彼の考えは、間違ったものだと気がつく。彼女は、例え籠の中の鳥と同じでも明らかに違うことがある。

それは、運命に抗い、その籠の中から脱出しようとしていること。


「貴女にはつくづくお転婆な姫で目が放せそうにない。吾妹は私が必ず守ってみせるさ」

「月読の君……。ありがとう。私は、輝血の大蛇を倒してこの国を平和にしてみせるわ」

「ああ。その為に、私も仲間たちもここにいる」

彼女の蒼い瞳が真っ直ぐに未来を見据えたように強い決意が言の葉に乗る。それを引き継ぐかのように、月読の青年は頷く。


「吾妹。必ず貴女との未来を私は手に入れてみせる」
(彼女を自由にし、彼女との未来を手に入れてみせる。私は吾妹に生きてほしい)

そう言の葉に決意を込めると月読の青年は、彼女に誓うように、強く優しい口づけをした。


END
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