遙かシリーズ

□一握りの幸せ
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―――祇園社。
先ほどから雪が降り始めていた。
繋がれていた手は離れ花梨はイサトより前の方を先に歩いている。
正確には走っていて、今は歩いているだが。

「イサトくーん」
と手を振ってイサトを呼ぶ満面の笑みで。


何もいらない。
花梨の笑顔を見れるのなら。
そんなことを思いながらイサトは花梨のところへと走りだす。
(このまま時が止まってしまえばいいのにな。)
そう思う自分がいる。
ずっとこんな時間が続けばいい、と。そういえば
これから先の戦いで花梨が傷つくこともなくなるだろうから。


笑顔だけを見ていたい。
花梨の哀しむ顔などみたくない。
何よりも花梨に
(つらい思いをさせたくないねぇんだ…)


でも一番の理由はずっと花梨と一緒にいたいから。
(オレが持っている力全てで花梨を守ってやる。絶対に。)
花梨が何よりも大切だから。
大切なものを、人をなくさないように。
この掌に掴めるものなど少ないかもしれないけど。
例えそれが一握り分の幸せだとしても。花梨の傍にいれるのなら花梨が傍にいてくれたらたったそれだけで。
――オレは幸せなんだ。



END
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