遙かシリーズ

□かえる場所
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「めずらしいね、望美がこんな時間まで月を眺めているなんてさ。」

すでに時刻は深夜。
普段ならヒノエの帰りを待ち、望美が起きていることは珍しくはないがたいてい部屋にいるはずだ。
それが今日は屋敷の中であれ庭に出て彼を待っているとは。
(何かあったのか・・・?)
そう思わずにはいられない。

「そうかな?月が綺麗だからかな・・・。」

「―――月の都が恋しいかい?」

彼の思いがけない問い掛けに少し動揺したがそれに返答するかのように違うよ、と首を横に振った。

「恋しくない、って言ったら嘘になるけど・・・。還らないよ。」

そういい だって、と言葉を彼女は続ける。


「私の帰る場所は大切な人――――ヒノエくんのいるところだけだから・・・。」

「望美・・・。オレの帰る場所―――オレの居場所は望美だけだ。“オレ”が唯一、一人の男“ヒノエ”として いれる場所は望美だけだ。」


そして 望美に口付けを一つ贈る。


帰る場所。
彼女が選んだのは、自分の世界ではなく、愛する人――ヒノエがいる場所。
そしてまたヒノエが帰る場所も望美がいるところ。
彼女がいるところが唯一、ただの青年である『ヒノエ』となれる場所。


END
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