オトメイト

□2人きりの時間
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コンコンと部屋のドアがノックされてから、ガチャと扉のノブが回され千鶴が部屋に入ってきた。いつも決まった時間に千鶴が主である一を起こしに来ているためだ。彼は彼女が部屋に訪ねる前にはすでに起きていたが瞼を閉じて愛しい彼女に起こされるのを待っていた。

「おはようございます。一様」
いつもなら千鶴がかけるその一言で彼は起きるのだが今日は全く起きる気配が感じ取れない。実際、彼は起きているのだが、とある理由で寝ている振りを続けた。それに彼女は気付いてない。

(あれ……?)

もう一度、彼に声をかけてみるが一向に一は起きるそぶりを見せなかった。

(疲れているのかしら?)

「一様、一様。起きてください!」
何度も名前を連呼し、その紡がれる言葉を阻止するかのように彼は彼女の腕を引き寄せる。刹那、お互いの唇が重なった。千鶴が気がつけば、彼の温もりが己の唇に残っていて。一瞬にして彼女の顔に熱が帯びた。

「…おはよう、千鶴」
と、いかにも狙ったようなあまり見せない笑みを彼がしていた。

「一様、もしかしてずっと起きてました?」
「ああ」
「じゃあ、なぜ起きてくれないんですか」
そう拗ねた表情をしている千鶴に彼は起きなかったわけをしぶしぶ話し始める。
「何故と言われても…。そもそも千鶴が【様】付けで俺を呼ぶからだ」
子供のような態度で顔を赤らめた彼はそう言った。
「……え?」
あまりにも、予想外だった返答が返ってきたためか、間抜けな声が出てしまう。
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