遙かシリーズ

□一握りの幸せ
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タッタッタと元気よく廊下を走る音が聞こえる。
(廊下を走るのはイサトくんしかいないよね。でも、こんな朝早くからどうしたんだろう?)
「花梨!」
(やっぱり、ね)
予想があたり微笑む花梨。
「ん?花梨、どうしたんだよ?」
「なんでもないよ。それより、イサトくん。慌ててきたみたいだけど、どうしたの?」
「ああ、外見てみろよ。雪が積もってるぜ」
そして 外まで花梨の手を引き外へ連れていくイサト。


外に出ると、辺り一面、雪が積もっている。そこには足跡が真っ直ぐこの屋敷まであるだけ。
「な?綺麗だろ?早く花梨に見せてやりたかったんだ」
「そのために、走って来てくれたの?」
「わるいかよ?」
「ううん。嬉しいよ。ありがとう!イサトくん」
と 満面の笑顔で花梨が言う。
「いや…、その、たいしたことじゃねぇよ」


それにさ、とイサトは少し照れた表情(かお)で言の葉を紡ぐ。
「オレが花梨と一緒に見たかったんだ。そうだ、これから祇園社に行かないか?」
うん、と花梨は承諾の返事をする。
「そうと決まれば行こうぜ、花梨」
と言って イサトは花梨の手を引き、走りだす。
「イサトくんはやいよ〜 」
「と、わりぃ…」

そう言ってイサトは、花梨の手を離す。
「嬉しくって、つい…な」
へへ、イサトは 幸せそうな表情で微笑む。
「ほら、早く行こうぜ」
と、イサトは花梨に手を差し出す。
くすり、と花梨は小さく笑ってイサトに差し出された手を重ね歩きだした。
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