遙かシリーズ
□最初で最後の約束
1ページ/6ページ
ぽつり、ぽつり と雨が降りはじめた。
「また、雨か・・・」
空を仰ぎ 一人の青年が呟く。
その呟きは、降りしきる雨の音に掻き消されていった。
「あかね・・・」
青年―――多季史は一人の少女の名前を無意識に呟いていた。
愛しい少女の名を。
一方、あかねはというと
一人 土御門の屋敷を抜け出していた。
あの人に逢いたい、その想いだけで抜け出し
古寺へと向かおうとした矢先、雨が降りはじめた。
「雨…」
(どうしよう・・・。)
そう 思いつつも
あの古寺に行けば、あの人に逢えるのではないかと
淡い期待をする自分がいる。
『雨は、私達を導いてくれる。』
彼が言った言葉のように彼と会う時には
必ずと言っていいほど雨が降っているのだから。
雨に導かれ 二人が逢うまであと少し。