遙かシリーズ

□最初で最後の約束
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ぽつり、ぽつり と雨が降りはじめた。

「また、雨か・・・」
空を仰ぎ 一人の青年が呟く。
その呟きは、降りしきる雨の音に掻き消されていった。
「あかね・・・」

青年―――多季史は一人の少女の名前を無意識に呟いていた。
愛しい少女の名を。



一方、あかねはというと
一人 土御門の屋敷を抜け出していた。
あの人に逢いたい、その想いだけで抜け出し
古寺へと向かおうとした矢先、雨が降りはじめた。

「雨…」


(どうしよう・・・。)


そう 思いつつも
あの古寺に行けば、あの人に逢えるのではないかと
淡い期待をする自分がいる。

『雨は、私達を導いてくれる。』
彼が言った言葉のように彼と会う時には
必ずと言っていいほど雨が降っているのだから。



雨に導かれ 二人が逢うまであと少し。
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