オトメイト
□わがまま
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「桐生先輩、せめて私の前だけでもわがままになってください」
「は?」
唐突に和音が言い出した事に思わず俺は驚いた。
こいつが言うことは、予想の斜め上をいくことが多いのは今に始まったことじゃない。
それは分かっている。
「先輩は我慢してることが多いじゃないですか。
だから、私の前だけでも、少しはわがままを言ってくれたらいいなあって」
和音の気持ちは嬉しい。
けれど、俺はすでにわがままになっていると思う。
和音が俺を選び隣にいてくれる。
これは、俺がわがままになって手に入れたものだ。
「馬鹿だな。
俺は和音に対しては十分わがままになってる。
お前だけは、誰にも譲れないからな。
もちろん、REXXのメンバーにも和泉さんにも」
和音は俺の言葉に照れながらも、どこか納得がいかないのかむくれている。
「そう、むくれるな。本心なんだから仕方ないだろう」
「ですけど……」
まだ何か言いたげな和音の言葉を遮るように俺は彼女の口を封じた。
そして、ゆっくりと重ねた唇を離す。
「俺は和音が好きだ。
お前だけは絶対に手放したくない。
これは立派なわがままだろ」
「……っ。私も桐生先輩が好きです。
だから、離さないでください」
照れた顔を隠すように、ぎゅっと俺に和音が抱きついてきた。
「ああ。お前だけは何があっても諦めるなんて出来ないからな。覚悟しておけ」
END
2015/05/23