10周年記念小説(8本)

□『武之内空』
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空ぁ?


なぁに、ピヨモン


ねぇーえ、空。
なんかあっても
一人で悩んじゃ
ダメだからね、
アタシがいるからね。




















「…………ピヨモン」


部屋で座り込んでいたアタシはピヨモンの言葉を反芻していた。


誰にも言えないことがある。お母さんにさえ。


だって自分でも
認めたくない事実を
他人に言えるはずもなくて。




でも、ピヨモンは?

アタシの半身には?

話したい。
ピヨモン。












アタシはおもむろに立ち上がり、パソコンの前に座った。

パソコンを立ち上げているこの時間は、深夜2時。


お母さんを起こさないように
静かに喋らなきゃと
時計の音だけがする部屋で、アタシは思った。


チカッチカッ


《あれぇ、なぁに?》


「…ねぇ、ピヨモン?」


《あ、そらぁ!》


「静かにっ。お母さん、寝てるの。ごめんねピヨモン。起こしちゃった?」


《大丈夫。どうしたの?空》


「ピヨモン、話、聞いてくれる?」


《勿論!話して》


「うん…………。」


アタシは一息おいて、深く深呼吸をしてから

誰にも言えなかった、自分でも認めたくなかった、アタシの気持ち、想いを話した。


「アタシね、皆大好きだけど、皆を愛してるけど、その中でも、太一は特別だった」


「特別好きだった」


「けどね、最近ね、ヤマトのことが愛おしくて、護りたくて、護られたくて、切なくて……………そう思うようになってる自分に気づいたの。」

「でも、それって……」

「それっ…て……」

アタシは言葉を切る。

ピヨモンに話しながら泣いている自分に気づいた。

「アタシの愛情って、こんなに脆いんて、思ってもみなかったの」

涙が止まらなくなってる。


《そらぁ、泣かないで?…………話難しくて、アタシちゃんとわかってないけど》

《空は太一のこと嫌いになっちゃったの?》


ピヨモンの言葉に目を見開く。


「そんなわけない!嫌いになるわけないじゃない!」


そぅ。だって、だって太一は…


「太一も…特別なの。ヤマトとへの好きとは別のところで特別。」

「好きの形は変わったけど、それでも特別なの」




《なら大丈夫》







「え?」

《だって空は誰も嫌いになってないよ?みんなへの愛情いっぱいのままなんだよ?》


「……ピヨモン」


《好きの形が変わっても“好き”なのは確かでしょ?》


「………そっか」


《うん!》


「そうだよね!」


幼なじみで
いつもふざけてるけど
皆を信じてくれて
引っ張ってくれて

アタシにとってヒーローで。

ピヨモンに問われて
改めて
太一が、『そういう』好きとは別のとこで特別だって気づいた。






やっぱりピヨモンって凄いの。


「ねぇピヨモン?」


《なぁに空?》









「ピヨモンのこと、特別、特別、愛してる。」











アタシ達は戦ってきた


END
設定:2001年秋初旬

明らか太一のこと好きだったんだと思う、空って。
空白の3年間に何があったのか気になるとこだけど、彼女なりに気持ちの変化に悩んだんじゃないかなと。
なにせ愛情の紋章だしワラ
 

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