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□満月の光。〜一護vr〜
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そう、俺がこいつに出逢ったのは、
死神の力をもらい、世界を変えてもらったのは、
この光り輝く満月の下での事だった―・・。


「・・・・たく。信じらんねぇ、コンの野郎!!」
「落ち着け一護。五月蝿いぞ。近所に迷惑がかかるだろう。」
「落ち着けるか、ボケっ!」

そういうと俺の隣を歩いていたルキアは眉間に皺を寄せ、俺よりも大きな声で怒鳴った。

「ボケとはなんだ?!貴様に言われる筋合いは無い!!」

あ〜・・・もしかして地雷踏んだ?
面倒くせぇ。髪を掻く。

こうなったのは全てコンのせいだ。

1週間前、俺がソウル・ソサイティにから帰ろうとした時、何故か旋回門が開けなくなり、お陰様で俺は現世へ1週間帰れなくなってしまった。
そこで俺がミスした事。それは代行証で死神化せず、コンを身代わりにした事だった。
見事に予感は的中。俺が帰って来ない事をいい事にコンは俺の体を使って遊び呆けていた。
チャド達によると、授業中抜け出しはするわ、テストで落書きのみ書いて提出するわ、
女子にセクハラはするわ。
ふざけてんじゃねぇ、コン!!

俺がやっと現世に帰ってこれたのは朝の6時。出口となった浦原商店の近くにたまたま
コンが歩いていた(といっても俺の体)。
逃げようとするコンを俺の体から無理やり出させ、そのまま学校へ行ったって訳だ。
ルキアの方はチャッピーがあるから楽だよなぁ・・・。
でもあいつが俺の体に入ってピョンピョン言ってるのも寒気がする。

学校に着くと先生からの呼び出しパラダイス。俺の成績も下がり、イメージも下がり。
当然のように放課後も補習の山で。
なんとか終わらせたが、もう今はオヤジの言う「黒崎家の門限」の7時はとうに過ぎている。
補習の上に飯抜きかよ・・・・。
だったらルキアを先に帰すべきだっt・・

「おい、一護!聞いておるのか?!」

「あ?」

ルキアの言葉で我に返る。

「貴様は・・・!私の言葉をき・・・」

ルキアの言葉が途切れる。
虚の気配だった。しかも今回はデカい。
俺は溜め息をついて、代行証で死神化した。
ルキアもチャッピーを取り出し、飲み込む。

「ぐぁぁぁぁぁ・・・・!!!」

くぐもった虚の声。

「たく、しょーがねーな・・・って!」

目の前に、胸に鎖をつけた子供が倒れこむ。

「おい、餓鬼!」

話しかけても反応しない。気を失っている。虚に追いかけられていたのか?しかも虚は子供に手を伸ばす。

「くそっ!」

俺は虚に飛びかかり、斬ろうとした。
・・・・・・が。
俺は確かに斬った。けれど何故かすり抜けていくように、手応えが無かった。
振り向いて周りを見回しても静かな住宅街。気配も消えていた。

「変な感じだったな・・・。でも気配がないから消えたのか?」

ルキアに尋ねると、不思議そうに「あぁ・・・」と呟いた。

「おい餓鬼、大丈夫か?」

子供は俯いていた顔をゆっくりとあげた。そしてニタリと顔を歪ませて笑うと鳩尾を殴ってきた。

「うっ!」

子供とは思えない、計り知れない力。夜一さん並に強い殴り・・・?!

「一護?!」

瞬時に刀を鞘から抜くルキア。刃を不気味な餓鬼に向けた瞬間、刀を引っ込めた。

「こ奴は・・寄生されている!」

「あ?この餓鬼の中にさっきの虚が入ったって事かよ!」

「くそ・・・、斬る訳にもいかん。」

ルキアが悔しそうに呟く。

『ケケケケ!!!おいおい死神よォ!どーしたどーした!』

餓鬼から発しる気味の悪いくぐもった声。

「あァ?!なめんじゃねーよ!」

俺は餓鬼に刀を振りかざそうとした。餓鬼は後で治療してやればいい・・・そう思っていた。
機嫌が悪く、頭に血が昇っていた。だから冷静な対応が出来なかった・・・。
その瞬間、虚は餓鬼の体から飛び出し、俺の背後に回った。
振り向いた刹那。
満月の光の降り注ぐ下で、虚は塵となった。
同時に、ルキアが地へ倒れこんだ。

「う・・・、は・・・・。」

「ルキア!!!」

あの時の光景が頭に広がった。
俺を庇って・・・・。
目の前に広がる光景は、あの時と同じだった。

「馬鹿者!何を油断していた?貴様・・・体がなまったのではないか・・・?!」

また・・・・。
また俺は護られた。
ルキアを・・・護れなかった。

「お前こそ何で始解しなかったんだよ!」

「戯け・・・。あそこでしたら貴様まで氷るだろう」

よろよろと立ちあがるルキア。

「・・・・悪ィ・・・・・。」

どうして俺は・・・・。
ルキアは微笑むと、「これからは油断するな!私の事は構わん。だから・・・」

「構わなくねぇっ!!!」

無意識に叫んでいた。
ルキアは俺をただ見つめている。

「俺は・・・、お前を護るってそう誓ったんだよ!!!お前が傷つく姿をもう見たくないんだよ・・・・。なのに・・・。」

ルキアは俺の頬に触れると、ぺし、と軽く叩いた。

「私はいつも貴様に護られている。感謝しているぞ。だから少しぐらいは私にも恩を返させてくれ。」

「・・・・・ルキア・・・・・・」

俺はルキアを持ち上げると、自身の背に乗せた。

「ありがとな、ルキア。でも、やっぱり俺はお前を護りたい」

歩き出しながらそう呟いた。その言葉はルキアに言っているというよりも自分自身に誓うようだった。
ルキアはフッと笑うと、
「お前も強情だな」
と言って俺の首に手を回し、顔を埋めた。
そんな俺達の姿は満月に照らされ、シルエットとなっていった。

もう1度誓う。
ルキアを護ると。

俺は、自分自身に、始まりの満月に
そう誓った。
そして俺達の家へと歩き出した。
 

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