DRRR!!(長編)

□お前なんか嫌いだ
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気づくと静雄は暗い闇の中にいた。
辺りを見回すが、何一つ、誰一人存在しない。
ただ闇だけが広がる空間に静雄は1人、そこに立っていた。


「シズちゃん。」


そんな闇の中、聞き覚えのある声に振り返る。
するとそこには闇に浮かび上がるように臨美が立っていた。
いつものように憎らしい笑みを浮かべ立っている臨美に、何故かいつものような苛立ちは覚えなかった。


「シズちゃん。」
「・・・んだよ。」
「シズちゃん、シズちゃん。」
「おい。」
「シズちゃん、シズちゃん、シズちゃん。」


どこか、臨美の様子がおかしい。
静雄の名前を呼ぶだけで、それ以外何も言おうとしない。
それに。
―――――何だ、この既視感は。
この光景を、どこかで見た気がする。
だけどどこかは思い出せなくて、それが何だかとても気分が悪い。


「シズ、ちゃん。」


臨美は何度も自分の名前を紡ぐ。
だが今呼ばれた自分の名は予想以上に声が近く、そしてその声がどこか苦しそうで。
そちらを見た瞬間。


「な・・・っ!」
「シズ、ちゃん・・・。」
「な、んだよこれ、離れろよっ!!」


自分の手が、臨美の首に伸びていた。
臨美の体は軽々と片手で持ち上げられ、その喉を圧迫する。
離そうとした、だけどどうやっても手が臨美の首から離れない。


「シズ、ちゃん。」


その時、頬に温もりが触れた。
臨美の手。
普段からは考えられないような優しい手つきで頬に包み込むように触れる。
そしてなぜか臨美は―――――微笑んだ。

「…っ!」

何で笑う、何でこんなことをされているというのにそんな嬉しそうに笑うんだ。
離れろ、離れろと何度も命令するが手は言うことを聞かない。
このままでは、臨美が…!
分かってはいる、でもどうしても手が動かない。
そして臨美の手が静雄から離れ、重力に従い落ちていく。
だらりと垂れた手、血の気のない顔。
…生気を失っていく。


「っ、臨美…!」


泣きそうな声で静雄は臨美を呼んだ。
臨美はそれに反応するように、薄く口を開いた。



「       」



何かを、口にした。
でも静雄には聞こえない。
何だ、何を言おうとしたんだ…そう問いかけようとしたが、出来なかった。
もう、臨美は動かなかった。
そこでようやく手が離れる。
どさり、物のように落ちていった臨美の体を呆然と見やる。
動かない。
あのナイフを振り回す手も、いつも自分から逃げ回る足も、理屈ばかり並び立てる口も、自分を真っ直ぐ射抜くように見る目も。
全て、全て、全て。
その全てが、静雄に全てを突きつける。


「俺が、臨美を殺した…。」


この手が、首を絞めた。
臨美を、殺した。
俺…俺が、殺した、俺が、俺が俺が俺が!!





「ぅ…ああぁあぁ―――――っっ!!」



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