土ミツ
(土方が泣いたその後)
「あー…そろそろ戻るか」
自分に何度も言い聞かせた。
あいつが幸せになればそれでいい。
俺じゃ幸せに出来ねぇ。
そう思ってた。
今思えば、そのことが間違っていたのか。
好きなら、一緒にいたいと思うのなら、その本能に従うべきだったのだろうか。
「はっ…、くだらねぇ」
そうだ。
もう終わったことだ。
副長の俺がいつまでも人の死をずるずると引きずるわけにはいかねぇ。
「くだらなくねぇよ」
そう、急に背後から聞こえた。
上半身だけ後ろを向けば、そこには見慣れた銀髪が入口から見え隠れしていた。
「てんめぇ、こんなところで何やっ…」
「大切なやつの死を、くだらねぇで終わらすなよ…!」
そいつの声は落ち着いていて、でもどこか怒りか何かの感情に満ちていて。
言葉が続かなかった。
「どうせまだ好きなんだろ。だったら泣きゃあいいじゃねえか、バカみたいに引きづればいいじゃねえか」
お前になにがわかる。
そう言おうとしたが、やめた。
どうせまたお説教されるんだろう。
そう思って、俺は屋上から出た。
頬に、涙の筋がまた一つ増えた。