妄想文
□髑髏と赤い障子
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目の前にいるのはおばさんだ。古くからの宿屋をやっているおばさんは、お茶とお菓子を部屋まで運んできてくれたのだ。
そろそろ宿をやめるのであまり人は泊めていないらしかったが、ひなびた感じが気に入ったので少し無理を言って泊めてもらっている。
おばさんはどこか人ごとの顔をして物騒な世の中になったねえ、と言った。
自分は特に思うところが無かったので、はあと答えてまた手元の雑誌に目を戻した。
なんだか無性に眠かった。
おばさんが盆を持ち、部屋から出て行くまで目を閉じなかったかよくわからない。