薄桜鬼

□ひとりにしない
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焦らず、待とう。
おまえが、俺のもとへ来る日を……。
おまえと、新選組の最後の場所…
函館で別れて以来…俺はおまえがここに来るのを待っている。
ただ、焦らず……焦らず…焦らず…
「…………」
杯に入った清酒を飲む。
いつもは、気分良く飲むのだが俺は気になっていることがあり、なかなかゆったりと気持ちよく飲むことができない。
原因は分かっている。
だが、今は来ると信じてただ、待つ。
……が、

俺は、行き先を教えただろうか?
西とだけ、言い残してあのまま置いてきてしまった気がする…。
「…ふん、結局、迎えにいかないといけないのだな……
俺にこんな手間をかけさせるとはな…
この代償は高くつくぞ……千鶴」


迎えに行くとしても、千鶴が何処に居るかわからないのではどうしようもない…。
まったく、俺にこんな手間をかけさせるとは…本当にたいした女だ。















******
「あの!千景さん?」
俺は、念願の女を腕の中に閉じ込めて酒を飲む。
やはり、心が満たされた時の酒はいい。
何より、腕の中に千鶴、おまえがいるのがたまらなく嬉しい。
「千景さん!飲みすぎですよ!」
千鶴は、しかめっ面で酒を取り上げた。
「っ!何をする…」

「こんなに、飲んだら体に悪いです!!!」
千鶴は絶対に渡さないというように酒を背中に隠し、俺から離れる。
「……」
俺は、どうしようかと考えふと名案を思い付いた。
「わかった、今日のところはこれで止めておく……」
千鶴は俺の言葉が以外だったのか、半信半疑という様子で俺を見る。
「一度決めたことは、曲げぬ…」
「……本当ですね?」
「鬼は嘘はつかん…それより、さっさと戻ってこい。
また、俺に迎いに行かせる気か?」

俺の言葉と、表情に千鶴は何かを感じたのか首を横に振って後退した。
「ふん、たまには、悪くないかもしれん…」
俺はそう言いながら、千鶴に近づき手を掴んで引いた。
「きゃっ!」
小さな悲鳴を上げて、千鶴は俺の胸へ戻ってきた。
そっと千鶴の細い背中に腕を回す。
「千景さん…」
千鶴は、俺にしがみついて頬を胸に寄せてきた。

「千鶴……おまえを愛している…
俺と、夫婦になれ…おまえを一人残したりしない…
もう、醜い戦の時代は終わった…俺はそう簡単に死なない…」
俺の言葉に、千鶴は涙を流した。
新選組を思い出したのだろう。
あいつらは、千鶴と逸れ千鶴を一人残しそして、死んで逝った。


「はい……千景さん」
千鶴は俺の腕の中頬を涙で濡らし頷いた…。








「夫婦といえば、子だ…
千鶴、俺の子を産め。」

俺は、そう言うと千鶴を二人用の布団の上に寝かせた。
「えっ!ち、ち、千景さん!?」



慌てる千鶴を見て、俺はこの先のずっと続く未来を想像してニヤリと笑みを浮かべた。
 

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