薄桜鬼

□すぐ傍に…
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すぐ傍に、おまえがいる。
少し離れていても、呼んだらすぐに来てくれる。
最高のおまけを連れて…



「左之助さん!」

俺に呼ばれて、千鶴が慎重に歩いて来る。
理由は…千鶴の腕ん中で眠るまだ小さな子。
ちなみに、男。
名前は…千左助。
千鶴の千と俺の左と助を合わせた名前。
なかなか、言い名前だろ?
なんたって、俺と千鶴が考えたんだからな…



俺は、千佐助を抱っこする……と、

「う、うわぁぁぁあああぁん」
すぐに、泣き出す。
「おいおい…またかよ…」

と、千鶴がまた千佐助を取り上げてあやす。
「もう、いつも言ってるじゃないですか…
左之助さんは、扱いが乱暴なんです…!」

と千鶴は、千佐助の頬を指の先で突いてみたり、体を揺らしたりして千佐助をあやしつづける。
「たく、男たるもの…こんなことで泣いてどうするんだよ…」
俺、好かれてないのかな…。

「もう…千佐助も、お父さんに涙顔を見せちゃダメでしょ…
男の子なんだから…」
千鶴に抱っこされていた千佐助は、その言葉で泣き止み急に笑い出した。
「……よく、わからねえな…」
左之助さんは、千佐助の寝顔を見ながらボソリと呟いた。
「何がですか?」

「乱暴なのは認めるけどよ、俺に抱かれて泣くって……
俺、好かれてねえのかな…」
不安そうに、呟いた俺に千鶴はにっこりと笑って、

「今は、よくわかってないんですよ…
でも、すぐに左之助さんに抱っこされて笑うようになりますよ…
それに、今だけじゃなくて、これから先、ずっと一緒にいるんですから…

私たちは…ね?」

千鶴はそう言って、微笑んだ。



「そう、だな…
よし!立派な武士に育ててやる!!!」


「ふふ、もう!左之助さんったら!!!!」




そうだな……
俺たちにはまだまだ、時間はたっぷりあるな……

俺たち三人の時間は、まだ始まったばっかりだ……
手を伸ばせば、すぐ傍に自分の愛おしい家族がいる。
俺は、この家族と一緒に幸せな家庭を築いていくことを、誓うよ…。
なんたって、仲間も背中を預けることができる親友さえも裏切ってきちまったんだからな……。
だから、ちゃんと、幸せになろうな…千鶴。


***→あとがき***
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