夢想話
□桜と酒と、大事な人
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「綺麗に咲いてますねぇ……。
あの、本当に私は来て良かったんですか?」
「あぁ。今回は社員の家族や恋人を1人だけ参加させて良い事にしたからな。
あいつの企画だというのがしゃくだが…」
そう言いながら、呂布は横目でおつまみを配り回る高順を見る。
「…まぁ、お前と共に過ごせるのは悪くないな」
「高順様に感謝しなきゃダメですよ?」
「…じゃあするから酌してくれ」
「分かりました。今日はいっぱいお相手します」
半ば断られるだろうと思っていた望みを、笑顔で承諾する貂蝉。
嬉しさに抱きしめたい気持ちを何とか我慢し、呂布は嬉しそうに笑いながら妹の髪をくしゃくしゃと撫で回した。
そこへ
「お顔が緩んでますよ呂布殿。皆が居るのをお忘れなく」
苦笑しながらビール瓶を手に、張遼がやって来た。
「知らん。お前こそいつもより緩んでるぞ」
「?…いつもと変わらないですよ?」
「お前の前では常に緩んでるからだろ。
一応仕事場ではもう少しシャキッとしてるんだ。…いつもはな」
呂布の言葉に、夫の顔をジッと見つめてみる貂蝉。
「…そんなに見つめられちゃ照れますね」
そう言いつつ、会社で貂蝉と一緒に居れるのが嬉しいらしく、張遼の顔はにこにこと笑みを描きっぱなしになっている。
(分かりやすい奴め)
その姿に心中でため息をはいてふと見れば、貂蝉がこれまた嬉しそうな笑顔を浮かべていて…
「…いつまでもつっ立ってちゃ疲れるな。あっちで花見するぞ」
言いながら優しく貂蝉の肩を抱いて、呂布は自分の席へと促す。
「!ちょっと呂布どっ」
「あと5・6本持って来い。つまみがある内にな」
思わず出た声もスッパリ遮り、言いたい事だけ行って去る姿に
張遼は小さくため息をはいて2人の背を見送った。
「…私のお嫁さんなのに」
「苦労してんだなお前ぇも」
「分かってるなら呂布殿どうにかして下さい」
「無茶言うなって。まぁ酒飲みゃ少しくれぇ大人しくなんじゃねぇか?
酒に夢中になってりゃ嫁さんとゆっくりできんだろぉぜ」
「…ビール何処でしたっけ?」
「あっちに置いてた筈だけ…」
「行きますよ高順殿。手伝って下さい」
「…へいへい」
普段は大人しい同僚の真剣さに苦笑しながら、後に続いて行く高順。
「少しもらって行って良いですよね?」
「「ど、どうぞ…」」
笑顔なのに有無を言わさぬ迫力を出しながら
張遼は言われた通りビールを抱え、貂蝉達の元に急いだのでした。